日本近現代史と戦争を研究する

歴史学の観点から日本近現代史と戦争について記します。

黄燐

白リンの野外被曝濃度

探していた、白リンの野外被曝濃度に言及したBerkowitzほかの研究を、 http://www.ntis.gov/ で入手した。 タイトルは、OCCUPATIONAL AND ENVIRONMENTAL HAZARDS ASSOCIATED WITH THE FORMULATION AND USE OF WHITE PHOSPHORUS-FELT AND RED PHOSPHORUS-BUTY…

EPA報告書:野外での暴露

さきにみたように、NRC報告書は、野外における黄燐煙の濃度に関して、 米国環境保護庁 (EPA)のデータを紹介していた。 今回は、そのEPAの資料にあたってみた。 タイトルは、 Summary Review of Health Effects Associated with Elemental and Inorganic P…

日本における黄燐の安全基準

前エントリでは、アメリカにおける黄燐の安全基準について、触れたが、 では、日本ではその基準はどうなっているのであろうか。 安全衛生情報センター(厚労省の委託により中央労働災害防止協会が運営)は、 GHS(「化学品の分類および表示に関する世界調和…

黄燐の吸入毒性に関するNRC報告書

「黄燐に限らずどんな煙も吸いすぎたら危険に決まっているのだから、黄燐だけを問題にするのはおかしい」というのは、いささか乱暴な議論であろう。物質の性質の違いによって、人体に与える影響も当然違ってくるのではないだろうか。そこで黄燐による影響は…

黄燐にはどのような毒性があるか

黄燐の毒性は、古くから知られており、 黄燐による害について記した文献は、枚挙に暇がない。 その害は、以下の六つに分類できる。 摂取による害 酷い火傷 火傷に止まらない毒性 短期間の吸入による害 長期間の吸入による害 環境への害 以下では、戦前日本の…

どの目標に対して榴弾と黄燐を組み合わせるか

タコつぼに隠れている兵士に対して、榴弾と黄燐を用いる “シェイクアンドベイク”作戦については、すでにみたところである。 しかし、榴弾と黄燐が用いられるのは、、タコつぼの兵士に対してだけでなかった。 米陸軍野外教範 FM 23-91 MORTAR GUNNERY(1991)…

米軍の戦時国際法上における黄燐認識

米陸軍法務官が、Field Artillery誌上に 戦時国際法および火器支援の入門向け解説を書いている。 Captain Jon D. Holdaway The Law of War and Fire Support:A Primer for Fire Supporters Field Artillery May-June 2001 http://sill-www.army.mil/famag/20…

朝鮮戦争と黄燐

以下は、米陸軍重迫撃砲隊の前進観測員として朝鮮戦争に従軍したRonald Eugene Rosserのインタビュー(2004.7.29)である。http://www.koreanwar-educator.org/memoirs/rosser_ronald/index.htm 迫撃砲は、支援火器に位置づけられる。 支援火器とは、歩兵部…

Phosphorous Smoke

米陸軍の野外教範(Field Manual) Smoke Operations (1990)は、 Phosphorous Smoke 燐煙について次のように述べている(拙訳を付した)。http://www.globalsecurity.org/military/library/policy/army/fm/3-50/toc.htm http://www.globalsecurity.org/mil…

外交会議第三会期(1976.4.21〜6.11)

以下は、外交会議第三会期の審議状況をまとめた国連事務総長報告書(1977)(竹本正幸・楠美智子「人道的理由で使用の禁止又は制限の対象となる焼夷兵器その他の特定通常兵器(一)」『関西大学法学論集』28-2、1978.6)による。 焼夷兵器に関する議論では、…

ルガノ会議(1976.1.28〜2.26)

以下は、1976.1.28〜2.26開催のルガノにおける第二回特定兵器専門家会議の審議状況をまとめた国連事務総長報告書(1977)(竹本正幸・楠美智子「人道的理由で使用の禁止又は制限の対象となる焼夷兵器その他の特定通常兵器(一)」『関西大学法学論集』28-2、…

特定通常兵器使用禁止制限条約の成立

以下は、櫻川明巧「特定通常兵器の法的規制」『立法と調査』109、1982.4による。 著者は、外務委員会調査室所属。 通常兵器のうち、「過度の傷害」を与え、 「無差別の効果」を有する兵器に対する関心は、1960年代末ごろから高まった。 特に、ベトナム戦争に…

焼夷兵器に関する国連事務総長報告書

■「ナパーム及びその他の焼夷兵器に関する国連事務総長の報告書(一)(二)」『関西大学法学論集』23(2)、(3)、1973年7月、9月 以下は1972年、国連第26回総会における決議2852に基づき、 国連事務総長のもとに専門家グループが作成した報告書(竹本正幸氏が翻訳…

黄燐焼夷弾について

最近、米軍による日本空襲について調べ始めたところだが、 米軍史料解読の参考のために、奥住喜重『B-29 64都市を焼く』(揺籃社、2006)を入手した。 同著によると、米軍が市街地に投下した弾種は、 I.B.類(Incendiary Bomb 焼夷弾) I.C.類(Incendiary C…