日本近現代史と戦争を研究する

歴史学の観点から日本近現代史と戦争について記します。

予測どおりの日本のアジア政策の破綻

帝国在郷軍人会札幌支部『良民』208(1934.1)に、
「紐育の『フオーリン・アツフエヤズ』誌十月号に、コロンビヤ大学教授ジヨン・イー・オーチヤードの寄稿した『日本のアジア政策は経済的に何を齎したか』と題する論文」が要約して紹介されています(9−10頁)。

一、有名無実の独立国満洲国を通じ乃至公然満洲国を併合して、日本が今後も依然満洲を支配する場合、支那満洲の喪失を容認しさうもないから、ボイコツト、満洲の撹乱計画、日本の管轄下に在る領域に対する侵入等支那はあらゆる手段を講じて日本に抵抗するであらう、日本は莫大な軍事費を負担し、然も支那本部との貿易の復活は望まれない。


二、かゝる不安定な情勢を一挙に根絶する為め、日本は支那をして満洲の現状に同意させるか、或は満洲国の領土を拡張し乃至緩衝国を設置する目的で、満洲国の境域外に軍事行動を起す、その結果忽ちにして支那の大半は征服されるかも知れぬかゝる情勢の推移に対しては他の列国が反対しよう此の場合日本が遭遇する困難は大きく経費は厖大なものとなり、日本が現に満洲で当面して居る経済的窮状が、大規模に再現されるだらう。即ち支那が工業化を遂げれば日本にとり恐るべき競争相手となり、これに反し支那が騒乱を続け貧困状態に在れば日本に対して何等の利益をも与へず却て負担を加へる結果となる。


三、最後に日本はその現在のアジア政策に依り、政治上軍略上得た所は幻覚的に過ぎず且つその代償として支払ふ所が余りに高価だとの結論に達するかも知れない。かくして帝国主義は後退する現在の所は日本のアジア政策がかゝる転向を遂げる見込は全然無い。


ほぼ予測どおりに、日本が強行路線をとり続けるほどに状況は困難になり、
結局、方針を転向できぬまま破綻してしまう。