日本近現代史と戦争を研究する

歴史学の観点から日本近現代史と戦争について記します。

盲目の愛国心

■竹越與三郎『人民読本』1913、34-38頁

愛国にせよ、忠義にせよ、余は其の盲目なるざらんことを希ふ。盲目の愛国心は、却つて国家の目的を過つを免れず。

然るに世には国家の事といへば、之を非難せざることを以て、愛国心とするものあり。奸雄また之に乗じて、その私を済さんとするものあるは、最も恐るべきことなり。

世に全き人なきが如く、全き国家なし。国家の欠陥と過失とを見て、之を匡正するは、唯々愛国心ある者之を能くす。我が国民の習慣なりとて、我が国家の所業なりとて、善悪共に之を弁護せんとするは、曲学世に阿るものにして、偽愛国者のみ。


しかし、愛国が天皇に対する忠義と同義であるとされ、忠義の側面が前面に出てきてしまうと、
国家の過失に対する冷静な判断は、難しくなるのではないだろうか。