■笠原十九司「南京事件論争の過去と現在」『世界』773、2008.1
否定論には二重構造があります。すなわち、<南京事件はまったくなかった>という全面否定と、<三〇万人の虐殺はなかった>という部分否定を意図的に混同させて用いる「論理」構造です。完全になかったという全面否定論は少なくとも学問の世界で唱えられることはありませんが、否定派は、<三〇万>という数字を否定してみせることで、全面否定に向けた印象操作を行なうとともに、南京事件が中国の「プロパガンダ」によって構築されているというイメージを造成しようとするのです。
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南京事件否定論がなぜ「30万」に固執するのかがわかります。