日本近現代史と戦争を研究する

歴史学の観点から日本近現代史と戦争について記します。

昭8.2.23 社説「連盟は自ら墓穴を掘るか」


■社説「連盟は自ら墓穴を掘るか」『北海タイムス』昭8.2.23


連盟脱退に廟議は一決した。
社説子は、脱退しても何も困ることがないと強気である。

わが国は、連盟を脱退したればとて、何も困ることはなからう。南洋の委任統治は、形式こそ連盟より委任を受けた事になつてゐるが、実際においては、実力によりてドイツから奪取したもので、殊に英仏との間に秘密条約の存する以上、之を抛棄する理由は断じてない。日本に対して制裁を加ふべしと、真面目にいきまいてゐる小国連もあるが、夫は人の褌で相撲を取らうといふ小国のみの事で、大国の中に、左様な事を考へるものはあるまい。人を呪はゞ穴二つで、自ら苦痛損害を蒙むらずして、我国にのみ打撃を与へ得る大国は何処にもない。其国内に■百万の失業者を有して、四苦八苦してゐる国が、■千万円に上る貿易を無視し得るか、考へて見たらよからう。況や、乱暴狼藉なる支那に対して、我国が干戈を動かすのがよくないとて、騒ぎ立てる列国が、気が狂はぬ以上、我国に対して武力を使用することは万々出来まい。

連盟は茲に全くその鼎の軽重を問はれたわけで、今後は、何人も、真面目に之を相手にせぬことゝなるであらう。

夫のみではない、我国が脱退した後の連盟は、国際連盟などゝ名乗る資格がなくなる。

文明の程度と、人種と、歴史と、地理と、国情とを全然異にする世界の列国を網羅して、之を一律に取扱はんとするところに連盟の錯誤がある。