日本近現代史と戦争を研究する

歴史学の観点から日本近現代史と戦争について記します。

昭8.2.28 社説「経済封鎖か」


■社説「経済封鎖か」『北海タイムス』昭8.2.28


「日支紛争諮問委員会」では、「東洋方面に於ける武器弾薬輸出に関する小委員会」の設置が提議され、
米ソ両国も招請されようとしていた。


社説子は、経済封鎖は覚悟の上であるとして、
封鎖されて困るのは日本だけでなく、世界各国であるとする。

我国は対支問題に就いて、国際道徳的に列国から責めらるゝ訳のないのは勿論であるが、経済封鎖をされて困るのは、我国ばかりでは決して無い世界各国悉くだといふ事実の認識を誤れるものである。

我国の経済の建前は、生糸を売つて棉花、鉄その他を買ふといふ建前である。生糸の輸出の出来ないのも困るが、棉花、鉄その他の輸入が俄に杜絶するのも、可なり打撃である。しかし、我国に棉花、鉄その他を輸出してゐる諸国はどうであらうか。棉花の生産過剰に悩んでゐるアメリカが、我国に輸出することが出来ぬとなつたならば、アメリカの農業経済が没落することは必定である。銑鉄、鋼鉄その他鉄製品の輸出国たる英、米独は現在でさへ売れずに困つてゐるのに、此上日本に輸出することが出来ぬとあつては英、米、独の重工業は、根本的に建直さねばならぬことゝなるが、斯様な建直しは果して可能であらうか。今日世界列国が不況乃至恐慌に苦しんでゐるのは、各国が世界経済の一環として協調せねば、円満なる運行が不可能たるに、この強調を欠いてゐるからである。