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日本近現代史と戦争を研究する

歴史学の観点から日本近現代史と戦争について記します。

G・シユタイン「円と剣」1938.12

軍票


■G・シユタイン「円と剣」1938.12(東亜研究所による翻訳印刷)

日本本国、その植民地たる朝鮮と台湾、関東州を含む日本の従属国満洲によつて構成されてゐる円ブロツクは、はつきりしない仕方で北支へ、更に一層はつきりしない仕方で中支占拠地域へ、更に極めて微かな態度で南支へ拡大してゐる。その工作の現実的なプログラムも態勢も嘗て知られたことがない、然しその二つの主要契機は、発展の現勢とともに、大体分析することが出来る。
第一は、日本が軍事的に征服する領域へ日本が容易に輸出し得るようにすることであり、第二は、此等の領域から外国為替を費はないで自由に輸入し得るようにすることである。このことは、従属諸領域および侵略諸領域に迷惑をかけつゝ、これらの領域の余剰生産物を外国へ販売することによつて獲得せる外国為替を全て日本自体が私有することを意味する。
(10頁)

【輸出】


日本の輸出総額に占める割合(1936)が以下のように、まとめられている。


対中国 4.4%
(中国が外国から買い入れる額の16.3%)


対台湾 6.8%
→台湾は、全輸入額の83.3%を「母国」から、9.1%を「日本の従属国」から、7.6%を「非日本的な他国」から買っていた。


対朝鮮 18.5%
→朝鮮は、全輸入額の85.1%を「母国」から、8.7%を「日本の従属国」から、6.2%を「非日本的な他国」から買っていた。


満洲国 14.8%(1930年は6.4%)
→全輸入額に「日本帝国の商品」が占める割合は、75.1%(1930年は39.3%)。

日本の従属国三つを総括してみれば、一九三六年には日本の全輸出額の四〇・一パアセントを占めてゐた。支那は四・四パアセントである、然るに政治的影響に関しては全く日本の圏外にある諸国は、日本の全輸出額の五五・五パアセントも買つてゐたのである。
(15頁)

台湾、朝鮮および満洲国のことから類推すれば、支那の占拠されたまたは従属させられた部分に対して円ブロツクの支配が数年も続けば少なくとも理論的には、日本帝国に、支那の輸入必要品の略七〇パアセントから八〇パアセントまでを支給することを許すであらう。とはいへ、その時でも、全支の日本商品購買額は―一九三六年の戦前のベエシスにて計算すれば―やうやく日本全輸出額の二〇パアセントに上る程度であらう。換言すれば隷属化せしめよくとして現に死にもの狂ひになつてゐる四億の支那民衆は、一九三六年に二千七百万の台湾と朝鮮の民衆が日本輸出業者に与へたより以上の利潤を与へはしないであらう。従つて、その時ですら日本全輸出額の全四〇パアセントは、円ブロツク以外の外国市場で販売されなければならないであらう。このことは、日本輸出全体額が確実に拡張するための決定的要因はやはりますます日本商品を購買しようとする諸外国の意思如何であることを示すのである。
(15-16頁)

【輸入】


日本の輸入総額に占める割合(「事変前」)については次のとおり。


台湾 9.8%
朝鮮 14.2%
満洲 6.3%
 計 30.3%

然るに日支事変前の支那は、日本の本国が外部から購買する総額の四・二%しか供給しなかつた。支那の商業上最も重要な地方が円ブロツクのうちへ編入せられてゐる今日では、支那に少しでも多く編入する機会さへあれば、出来る限り利用せられてゐるのであるが、その結果は失望的である―日本は支那の占拠地域に於て価値があると思はれる全てに手をつけ、支那生産物の外国人購買者をその領域から追払ひ(それは現になされてゐる)うるにも拘らず、日本は支那から物を買ふのに最早や外国為替を必要としないにも拘らず、且つ日本が多くの場合に実行する完全なまたは事実上の没収といふ低廉な方法があるにも拘らず―。
(22-23頁)


世界市場から引き続き多く買い入れをなす必要があり、
従って外国為替が焦点となる。


(―略―)

日本は、円ブロツクの通貨機構が、結局は円滑に、有効に、殆んど自動的に、且つ余り露骨な、支那または第三国の利益の侵犯といふ外観をも与へずに、運ぶことを予想して樹立せる此等の経済政策の基礎を、せめて武力によつてでも礎きあげんものと努力してゐる。「新支那」といふ名前をもつ従属支那人官吏によつて、適用せられる外国為替管理に関する現代的な工夫が、日本の陸海軍軍人によつて実行せられたやうな、取引と財産に対する現在の荒々しい干渉にとつて代るべく準備せられてゐる。
(33頁)

このことは、支那を、台湾、朝鮮および満洲国の如き円ブロツクの構成部分に編入すること、日本に有用である全ての産業部門の発展、日本産業と競争しており、または競争するやうになるかもしれない全ゆるそのほかの産業の窒息、支那の遠大な、拡大してゆく戦前の自足性を完全に日本へ従属せしめること、支那経済の円ブロツク外における世界との交渉を、日本自身の必要と調和するやうな方向へ還元すること、を意味するに過ぎない。
(34頁)