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日本近現代史と戦争を研究する

歴史学の観点から日本近現代史と戦争について記します。

恩給と戦犯


昭和21年1月、政府はGHQの指示を受けて、恩給の給与を停止する。


昭20.11.24 SCAPIN 338 “Pensions and Benefits”

1. The Imperial Japanese Government is directed to take the necessary steps as rapidly as practicable and in no event latar than 1 February 1946 to terminate all payments except as authorized by this Headquarters, of any public or private pensions or other emoluments or benefits of any kind granted or conferred to any person:


a. By reason of military service, including severance or retirement pay or similar bonus or allowance, except compensation for physical disability, limiting the recipients ability to work, at rates which are no higher than the lowest of those for comparable physical disability arising from non-military causes;


b. By reason of membership in or services to any association, society, or other organization dissolved or suspended as a result of any order of the Supreme Commander for the Allied Powers;


c. Who has been removed from any office or position as a result of any order of the Supreme Commander for the Allied Powers;


d. Who has been interned or arrested as a result of any order of the Supreme Commander for the Allied Powers, during the term of internment or arrest, or permanently, in case of subsequent conviction.


(『GHQ指令総集成』2、エムティ出版、1993、532頁)

昭和21年勅令第68号「恩給法ノ特例ニ関スル件」(1.31)


第一条

軍人若ハ準軍人、内閣総理大臣ノ定ムル者以外ノ陸軍、海軍、第一復員若ハ第二復員ノ部内ノ公務員若ハ公務員ニ準ズベキ者(以下軍人軍属ト称ス)又ハ此等ノ者ノ遺族タルニ因ル左ノ各号ニ掲グル恩給ハ之ヲ給セズ
一 普通恩給
二 廃疾ノ程度ガ恩給法施行令(以下令ト称ス)第二十四条ノ第七項症ニ係ル増加恩給
三 傷病年金
四 一時恩給
五 廃疾ノ程度ガ令第三十一条ノ第三目症又ハ第四目症ニ係ル傷病賜金
六 扶助料
七 一時扶助料


第七条

恩給ヲ受クル者又ハ受クベキ者連合国最高司令官ニ依リ抑留又ハ逮捕セラレタルトキハ其ノ間恩給ノ支給ハ之ヲ差止メ又ハ恩給ヲ受クルノ権利ハ之ヲ裁定セズ


第八条

公務員若ハ公務員ニ準ズベキ者又ハ此等ノ者ノ遺族連合国最高司令部ニ依リ抑留又ハ逮捕セラレ有罪ノ判決確定シタルトキハ抑留又ハ逮捕ノ時ヨリ恩給ヲ受クルノ資格又ハ権利ヲ失フ
公務員又ハ公務員ニ準ズベキ者連合国最高司令官ノ命令ニ基キ退職シタルトキハ恩給ヲ受クルノ資格又ハ権利ヲ失フ
第四条乃至第六条ノ規定ハ前二項ノ規定ノ適用ヲ妨ゲズ 


占領解除を目前にして、
恩給復活の声が高まっていった。

衆院厚生委員会において、青柳一郎はSCAPIN 749によって、
GHQが恩給停止を解いたと発言しているが、
昭27.3.3にSCAPIN 749は発せられておらず、
別の日次に発せられたSCAPIN 749も恩給に関係するものではない。


昭27.3.18衆院厚生委員会における青柳一郎(自由党)の発言

昭和二十年十一月のスキヤツピン三三八号は、本年三月三日のスキヤツピン七四九号によりまして、前の指令の例外として戦没者、遺族、戦傷病者に対し、従来禁止されておつた年金及び給付を支給してさしつかえないということに相なつたのであります。
(『第十三回衆議院厚生委員会議録第十三号』2頁)


ともかく恩給の復活が確定した。
政府は恩給法の再給与に慎重を期し、一年の猶予を設けた。
そのため、昭28.3.31まで恩給停止を規定した「恩給法ノ特例ニ関スル件」の効力を延長させた。
同時に恩給復活までの繋ぎとして、戦傷病者戦没者遺族等援護法を制定した。


昭27.3.18衆院厚生委員会における菅野官房副長官の答弁

政府の考えといたしましては、恩給を復活することが、まさに本筋でありまして、これをもつて軍人の遺家族の方々、あるいは戦傷病者の方々に、老後の生活の一助とされたいというのが、ほんとうの希望であります。しかしながら、先ほど来申し上げておりますような事由によりまして、簡単に復活できませんので、しばらく時間的の余裕をいただきまして、慎重に検討して復活いたしたい、こういう希望で法律案を提出いたしておるのでございまして、それと相関連する部分につきましては、今回提案されました軍人遺家族あるいは戦傷病者の援護の法律(引用者注―戦傷病者戦没者遺族等援護法)は、確かに暫定的なものでございます。
(『同』4頁)

慎重に検討いたしまして、そうして復活した方が、その恩給、扶助料を受ける方々のためにも、また国民の感情から言つても、至当ではなかろうか、こういうふうに考えまして、さしあたりこのポツダム政令(引用者注―上掲昭和21年勅令第68号)は、法律としての効力を来年の三月三十一日まで存続することといたしまして、それまでに、総理府の外局といたしまして、恩給法特例審議会というものを開いて、広く各方面の方々の御意見を総合して、最も妥当公正な軍人恩給の復活案をつくりたいと、かように考えておる次第であります。しかしながら、これは一年の日子がございまして、その間何らの措置をしないということは、政府としても、国民としても、忍びないことでございまするので、別に厚生省の方から今回の援護法が出ておるのでございます。従いまして、軍人恩給あるいは扶助料の復活ということになりますると、援護法の方にも、それに対応しまして改正等が行われなければならぬ、かように考えておる次第でございます。
(『同』3頁)

追放の解除につきましては、先般所要の法律案をつくりまして訴願審査会ができまして、そこで解除をしておるのでありますが、それに解除された者の恩給の取扱いが書いてございます。それで戦犯者といえども、その刑の執行を終わりました者につきましては、単なる追放でございまして、これが解除になりました場合におきましては、本来の原則から言いますと、それは恩給権の復活が行わるべきでありますが、これはまだ所要の政令等が整備されておりませんので、実際はやつておりません。しかしながら、他の法令の禁止がない限りにおいては、復活すべきものと考えております。
(『同』3頁)

昭和27年法律第205号「恩給法の特例に関する件の措置に関する法律」(6.20)

(恩給法の特例に関する件の一部改正)
第一条 恩給法の特例に関する件(昭和二十一年勅令第六十八号)の一部を次のように改正する。

  第七条及び第八条を次のように改める。

 第七条及第八条 削除

  第九条中「前八条」を「第一条乃至第六条」に改める。

 (恩給法の特例に関する件の効力)

第二条 恩給法の特例に関する件は、昭和二十八年三月三十一日まで、法律としての効力を有するものとする。

(中略)

   附 則

1 この法律は、公布の日から施行する。

2 この法律施行の際改正前の恩給法の特例に関する件第八条第一項又は第二項の規定により恩給を受ける資格又は権利を失つている者については、なお従前の例による。


「恩給法の特例に関する件」の昭和28年3月31日という効力期限は、
衆議院解散中の参議院緊急集会において、5月31日となり、
さらに同年法律第38号において、7月31日までとなった。
総理府恩給局編『恩給百年』1975年、285頁)


そしてついに、8月1日、恩給が復活した。


 
昭和28年法律第155号「恩給法の一部を改正する法律」(8.1)

附則

 (施行期日)

第一条 この法律は、昭和二十八年八月一日から施行する。但し、附則第二十二条の規定は、昭和二十九年四月一日から施行し、恩給法第五十八条ノ四の改正規定は昭和二十八年七月分の恩給から、附則第三十七条の規定は昭和二十七年六月十日から、附則第四十条の規定は昭和二十八年四月一日から適用する。

 (法令の廃止)

第二条 左に掲げる法令は、廃止する。

 一 恩給法の特例に関する件(昭和二十一年勅令第六十八号)

 二 恩給法の特例に関する件の措置に関する法律(昭和二十七年法律第二百五号)

(旧勅令第六十八号第八条第一項の規定により恩給を受ける権利又は資格を失つた者の当該権利又は資格の取得)

第二十九条 旧恩給法の特例に関する件の措置に関する法律による改正前の旧勅令第六十八号第八条第一項(以下本条において「改正前の旧勅令第六十八号第八条第一項」という。)の規定により恩給を受ける権利若しくは資格を失つた公務員(公務員に準ずる者を含む。以下本条において同じ。)若しくはその遺族又は改正前の旧勅令第六十八号第八条第一項の規定により恩給を受ける権利若しくは資格を失つた公務員の遺族は、附則第十条又は第十七条の規定により恩給を受ける権利又は資格を取得する場合を除く外、この法律施行の時から、これらの者が失つた恩給を受ける権利又は資格に相当するこの法律の附則の規定及び改正後の恩給法の規定による恩給を受ける権利又は資格を取得するものとする。


(中略)


4 改正前の旧勅令第六十八号第八条第一項の規定に該当して拘禁されている者については、その拘禁中は、年金たる恩給を停止し、又は一時金たる恩給の支給を差し止めるものとする。

昭和28年法律第181号「戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律」(8.7)


附則

20 日本国との平和条約第十一条に掲げる裁判により拘禁された者(以下「被拘禁者」という。)が、当該拘禁中に死亡した場合(被拘禁者が軍人軍属であつた在職期間内に公務上負傷し、又は疾病にかかり、これにより当該拘禁中に死亡した場合を除く。)には、その者の遺族に遺族年金及び弔慰金を支給する。この場合においては、改正後の戦傷病者戦没者遺族等援護法の規定による遺族年金及び弔慰金(第三十四条第一項の規定により支給するものをいう。)に関する規定を準用する。

21 この法律の施行の際(この法律の施行後被拘禁者が死亡した場合は、当該死亡の際)、当該被拘禁者の死亡に関し、扶助料を受ける権利を有する者がある場合においては、当該死亡に関し、前項の遺族年金は支給しない。


(未完)