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日本近現代史と戦争を研究する

歴史学の観点から日本近現代史と戦争について記します。

戦犯・靖国参拝に関する質問書と政府答弁書 平17.10


質問:
質問第21号「『戦犯』に対する認識と内閣総理大臣靖国神社参拝に関する質問主意書」平17.10.17 野田佳彦提出


答弁:
答弁第21号「衆議院議員野田佳彦君提出『戦犯』に対する認識と内閣総理大臣靖国神社参拝に関する質問に対する答弁書」平17.10.25


質問

一 「戦犯」の名誉回復について
 1 極東国際軍事裁判に言及したサンフランシスコ講和条約第十一条において、「これらの拘禁されている者を赦免し、減刑し、及び仮出獄させる権限は、各事件について刑を課した一又は二以上の政府の決定及び日本国の勧告に基づくの外、行使することができない。極東国際軍事裁判所が刑を宣告した者については、この権限は、裁判所に代表者を出した政府の過半数の決定及び日本国の勧告に基づくの外、行使することはできない」とある。これは、日本国政府が勧告し、さらに刑を課した国ならびに極東国際軍事裁判所の場合は裁判所に代表者を出した政府の過半数が決定すれば、拘禁されているものは赦免、減刑、仮出獄されるという意味に相違ないか。


答弁

一の1について

 日本国との平和条約(昭和二十七年条約第五号。以下「平和条約」という。)第十一条は、極東国際軍事裁判所が刑を宣告した者については、同裁判所に代表者を出した政府の過半数の決定及び我が国の勧告に基づく場合に赦免し、減刑し、及び仮出獄させる権限を行使することができることにつき規定しており、また、その他の連合国戦争犯罪法廷が刑を科した者については、各事件について刑を科した一又は二以上の政府の決定及び我が国の勧告に基づく場合に赦免し、減刑し、及び仮出獄させる権限を行使することができることにつき規定している。


質問

2 昭和二十七年五月一日、木村篤太郎法務総裁から戦犯の国内法上の解釈について変更が通達された。これによって戦犯拘禁中の死者はすべて「公務死」として、戦犯逮捕者は「抑留又は逮捕された者」として取り扱われることとなった。さらに「戦傷病者戦没者遺族等援護法」の一部が改正され、戦犯としての拘留逮捕者を「被拘禁者」として扱い、当該拘禁中に死亡した場合はその遺族に扶助料を支給することとなった。これら解釈の変更ならびに法律改正は、国内法上は「戦犯」は存在しないと政府も国会も認識したからであると解釈できるが、現在の政府の見解はどうか。


答弁

一の2について

 平和条約第十一条による刑の執行及び赦免等に関する法律(昭和二十七年法律第百三号)に基づき、平和条約第十一条による極東国際軍事裁判所及びその他の連合国戦争犯罪法廷が刑を科した者について、その刑の執行が巣鴨刑務所において行われるとともに、当該刑を科せられた者に対する赦免、刑の軽減及び仮出所が行われていた事実はあるが、その刑は、我が国の国内法に基づいて言い渡された刑ではない。


質問

3 昭和二十七年六月九日、参議院本会議において「戦犯在所者の釈放等に関する決議」、同年十二月九日、衆議院本会議において「戦争犯罪による受刑者の釈放等に関する決議」がなされ、昭和二十八年八月三日、衆議院本会議においては「戦争犯罪による受刑者の赦免に関する決議」が全会一致で可決され、昭和三十年には「戦争受刑者の即時釈放要請に関する決議」がなされた。サンフランシスコ講和条約第十一条の手続きに基づき、関係十一カ国の同意のもと、「A級戦犯」は昭和三十一年に、「BC級戦犯」は昭和三十三年までに赦免され釈放された。刑罰が終了した時点で受刑者の罪は消滅するというのが近代法の理念である。赦免・釈放をもって「戦犯」の名誉は国際的にも回復されたとみなされるが、政府の見解はどうか。

4 「A級戦犯」として有罪判決を受け禁固七年とされた重光葵は釈放後、鳩山内閣の副総理・外相となり、国連加盟式典の代表として戦勝国代表から万雷の拍手を受けた。また、それらの功績を認められ勲一等を授与されている。同じく終身刑とされた賀屋興宣は池田内閣の法相を務めている。これらの事実は「戦犯」の名誉が国内的にも国際的にも回復されているからこそ生じたと判断できる。仮にそうではなく、名誉が回復されていないとするならば、日本国は犯罪人を大臣に任命し、また勲章を与えたということになるが、政府はこれをいかに解釈するか。

5 「A級戦犯」として受刑し、刑期途中で赦免・釈放された重光葵、賀屋興宣らの名誉が回復されているとすれば、同じ「A級戦犯」として死刑判決を受け絞首刑となった東條英機以下七名、終身刑ならびに禁固刑とされ服役中に獄中で死亡した五名、判決前に病のため病院にて死亡した二名もまた名誉を回復しているはずである。仮に重光葵らの名誉は回復されており、東條英機以下の名誉は回復されていないと政府が判断するならば、その理由はいかなるものか。


答弁

一の3から5までについて

 お尋ねの「名誉」及び「回復」の内容が必ずしも明らかではなく、一概にお答えすることは困難である。
 お尋ねの重光葵氏は、平和条約発効以前である昭和二十五年三月七日、連合国最高司令官総司令部によって恩典として設けられた仮出所制度により、同年十一月二十一日に仮出所した。この仮出所制度については、日本において服役するすべての戦争犯罪人を対象として、拘置所におけるすべての規則を忠実に遵守しつつ一定の期間以上服役した戦争犯罪人に付与されていたものである。
 また、お尋ねの賀屋興宜氏は、平和条約第十一条による刑の執行及び赦免等に関する法律により、昭和三十年九月十七日、仮出所し、昭和三十三年四月七日、刑の軽減の処分を受けた。この法律に基づく仮出所制度については、平和条約第十一条による極東国際軍事裁判所及びその他の連合国戦争犯罪法廷が科した刑の執行を受けている者を対象として、刑務所の規則を遵守しつつ一定の期間以上服役した者に実施していたものであり、また、この法律に基づく刑の軽減については、刑の執行からの解放を意味するものである。
 お尋ねの死刑判決を受け絞首刑となった七名、終身禁錮刑及び有期禁錮刑とされ服役中に死亡した五名並びに判決前に病没した二名については、右のいずれの制度の手続もとられていない。
 そして、重光葵氏及び賀屋興宣氏については、昭和二十七年四月二十八日、平和条約の発効及び公職に関する就職禁止、退職等に関する勅令等の廃止に関する法律(昭和二十七年法律第九十四号)の施行により、選挙権、被選挙権などの公民権が回復され、その後、衆議院議員に当選し、国務大臣に任命されたものである。また、重光葵氏については、昭和三十二年一月二十六日の死去に際し、外交の重要問題の解決に当たった等の功績に対して、勲一等旭日桐花大綬章が死亡叙勲として授与されたものである。


質問

6 すべての「A級戦犯」の名誉が国内的にも国際的にも回復されているとすれば、東條英機以下十四名の「A級戦犯」を靖国神社が合祀していることにいかなる問題があるのか。また、靖国神社内閣総理大臣が参拝することにいかなる問題があるか。


答弁

一の6について

 靖国神社の行う合祀は、宗教法人である靖国神社の宗教上の事項であるから、政府としては、合祀についていかなる問題があるのかお答えする立場にない。
 靖国神社内閣総理大臣が参拝することにいかなる問題があるかとのお尋ねについては、法的な観点から申し上げれば、かねて述べているとおり、内閣総理大臣の地位にある者であっても、私人の立場で靖国神社に参拝することは憲法との関係で問題を生じることはないと考える。また、内閣総理大臣靖国神社への公式参拝内閣総理大臣が公的な資格で行う靖国神社への参拝をいう。)についても、国民や遺族の多くが、靖国神社を我が国における戦没者追悼の中心的施設であるとし、靖国神社において国を代表する立場にある者が追悼を行うことを望んでいるという事情を踏まえて、専ら戦没者の追悼という宗教とは関係のない目的で行うものであり、かつ、その際、追悼を目的とする参拝であることを公にするとともに、神道儀式によることなく追悼行為としてふさわしい方式によって追悼の意を表することによって、宗教上の目的によるものでないことが外観上も明らかである場合には、憲法第二十条第三項の禁じる国の宗教的活動に当たることはないと考える。