日本近現代史と戦争を研究する

歴史学の観点から日本近現代史と戦争について記します。

植民地とはいかなる形式か


国際法学者・有賀長雄は、韓国併合の直前、
「合邦」の形式を三種に分類し考察している。
(有賀長雄「合邦の形式如何」『政友』120号、1910年7月)

合邦の方法には対等と不平等の二あり。対等にて合法〔合邦カ〕すとは国際法に所謂実体合一なるが、此の如きは日韓の場合に於ては問題外なり。不平等の地位にありてする合邦は仏語のアネション(合併)にして、之れに三種あり。(一)属邦としての合邦、(二)殖民地としての合併、(三)地方としての合併、之れなり。皆各々法理に於て異なれり


日韓の力関係からいって、「不平等」な「合邦」となる。
「不平等」な「合邦」は三種、その一つに「殖民地」がある。


その三種について、
海野福寿編『外交史料 韓国併合』下、不二出版、2003年、621頁において、表に整理されている。

両国の関係 韓国君主の存廃 法の施行 有賀のコメント
1 宗属関係 属邦として君主存続 属邦のみの憲法制定。日本法律を原則的に適用、条約適用 不採用
2 植民地
 〔A〕直轄植民地 君主廃止 日本憲法不適用、法律・条約も不適用あるいは部分変更。 従来の政策に反する
 〔B〕自治植民地 自治政府(君主国ではない) 自治憲法制定権・議会の立法権・条約の適用制限 不採用
3 内地化(一地域としての合併) (北海道・樺太と同様) 日本憲法・法律・条約の適用 参政権問題などを生ずる


一進会が構想していたのは、1の「宗属関係」であった。


しかし実際の併合は、2-A「直轄植民地」にあたる。


韓国皇帝は廃され、憲法が施行されず、天皇に直隷する総督が置かれ、
「制令」の制定ほか一切の政務を統轄する権限をもって統治にあたった。