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日本近現代史と戦争を研究する

歴史学の観点から日本近現代史と戦争について記します。

「併合ノ趣旨ニ悖リ殖民地トシテノ計画ヲ樹立」


小熊英二「日本人」の境界―沖縄・アイヌ・台湾・朝鮮 植民地支配から復帰運動まで(163頁)によれば、
「併合」は欧米の植民地支配とは違う、という言説は、『万朝報』社説などでなされたようである。

コスト論からの併合反対論や経費節減論も存在したが、より多かったのは、「韓国の併合は……義侠的行為たるを賞すべし」という自己陶酔だった。当時の論調では、併合はロシアなどの脅威を防ぐ「東洋平和」のために行われたもので、国防力も経済力もない朝鮮の側から併合を申しいれ、日本は義侠心から不利を承知でそれに応じたのだとされていた。そのなかで赤字経営は、欧米の植民地支配が経済的収奪を目的としているのと異なり、併合が「東洋平和」のための「義侠的行為」である論拠として語られることになったのである。
(163頁)


『万朝報』社説については、後々、原典に当りたいが、
そのような「義侠的行為」言説は、一定の影響力をもったとしても
だんだんと、その当否が明らかになっていったことであろう。


当局は、1919年11月、朝鮮人牧師の次のような言動を探知している。

日本カ朝鮮ヲ併合シタル理ナキニアラス世界ノ歴史ニ見ルモ弱国ハ強国ニ食マレ又国ト国トヲ併合シタル例ニ乏シカラス日本モ亦此ノ軌ヲ踏ミタルニ外ナラス 
然レトモ日本ハ朝鮮ヲ併合シテ以来併合ノ趣旨ニ悖リ殖民地トシテノ計画ヲ樹立シ万般ノ施政孰レモ其ノ政策ノ範囲ヲ出テス又吾等鮮人ノ行為ヲモ局限シタリ是即チ吾等ノ不満トスル処ニシテ如何ナル手段方法ヲ以テスルモ日本ニ対抗シ奪取セラレタル朝鮮ヲ回復セスシテ止マンヤ而モ時勢ハ圧迫ニ苦メル各民族ノ独立ヲ要求シツツアルニアラスヤ、現今日本ノ政策ヲ見ルニ一トシテ詐欺的手段ニ出テサルハナク毫モ鮮民族ニ対スル誠意ノ認ムヘキモノナシ
(「京城民情彙報」大8.11.19、陸軍省『朝鮮騒擾事件関係書類』、アジア歴史資料センター ref:C06031123200)