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日本近現代史と戦争を研究する

歴史学の観点から日本近現代史と戦争について記します。

「日本の近代性」

書庫


■ウィラード・プライス「日本の近代性」『観光』8-3、昭15.8


著者は、米国人記者。
日本がいかに新しいものを取り入れながら、
古いものを墨守しているかを繰り返し主張している。

日本中至る所で英語は話されると聞いてゐたが、私達の村では英語を話す者が一人もゐないのを知つて驚いた。ここの村人達は英語を聞いたこともないに違いない。
(中略)
私達の女中は漁師の妻だつた。彼女は英語を一語も理解せず、又習はうともしなかつた。彼女は私達が日本語を知らないのに驚いたものである。
「御国では学校で日本語を教へないんですか」と彼女は聞いた。
日本の上級学校では英語を教へてゐることを彼女は知つてゐるのであるから、之は彼女の考へからすれば全く論理的な質問であつた。
(28頁)

学校は立派なモダンな造りで、最新式の設備をもつてゐる。しかし学校の表玄関近く目立つ場所に一つ離れて立つてゐるあの窓のない建物は何であらうか。それは天皇・皇后両陛下の御真影をお納めしてゐる奉安殿なのである。
(29頁)

至る所で、神秘的なものと現実的なものとの奇妙な融合が見られる。多くの近代的大工場には稲荷神社がある。狐は工場の守護神なのである。
(同頁)

戦争に於ても亦日本は不思議に新しくして古い遣り方をする。日露戦争で戦死した日本の兵士の霊が現在日本軍と共に戦つてゐるといふ事実は、支那に於ける最近の日本の戦勝に当つて信ぜられてゐた。
日本刀は現実に生きてゐてその使用者を導くと信ぜられてゐる。
今東京の街角に見られる、あの通りがかりの婦人が一針づつ縫つて行く千人針は、それを身に着けた兵士を凡ゆる危害から護ると考へられてゐる。
それは一種の鏈帷子だ。
最も重要なのは、東京におはす天皇が霊的な御存在として各戦場にお出ましになつて三軍を指揮し給ふと固く信じられてゐる事である。
(30頁)