日本近現代史と戦争を研究する

歴史学の観点から日本近現代史と戦争について記します。

ソ連や英国が執拗なのさ


相馬道男「時事漫語 支那事変の新段階と国民精神総動員」『北海道行政』6-3、昭13.3

A 一月十六日、帝国政府も愈々堪忍袋の緒を切つて、性懲りのない蒋政権を、断然、黙殺する重大決意を表明したね。しかし、連戦連敗の蒋介石が、よくも根気よく抗戦を続けるものだね?

B 蒋政府の根気がよいんじやないんだよ。それは、中国共産党を後見して居るソ連、特に蒋介石を尻押する英国が執拗なのさ。考へても見給へ、北支は勿論、蒋政府の拠つて立つ心臓部とも称すべき、■(口へん+折)江財閥の本拠を悉く占拠せられ、逃げてゆく先々で、我が荒鷲部隊に不断に脅威せられ、長期抗戦もすざまじき限りさ。とうに抵抗力なぞあるものでないよ。たゞ英国なぞにしてみれば、日本の圧倒的勝利の下に、のめ\/引下るのは、過去八十年に亘つて進出した極東から、全面的に締め出しを、喰ふことになるからね。何しろ英国の権益は、六十億に上る、と称せられて居るんだ。飽く迄、蒋政権を踊らして、日本の進出を、少しでも喰ひ止めようと、あの手、この手を尽して居るのさ。併し、結果がその反対になつて居るのは皮肉だが…。


Bは、蒋を応援する「悪辣」な第三国に義憤を感じ、「支那大衆」を救うことが
日本国民の道義的責任だと主張する。

B それよりも、支那大衆の苦悩を顧みず、無意味な抗戦を続けさせる第三国の悪辣振りには、実際義憤を感ぜざるを得ないね。だから、一日も早く支那大衆を戦禍から救ひ、東亜の禍根を断つことは、吾々日本国民の道義的責任だ。