日本近現代史と戦争を研究する

歴史学の観点から日本近現代史と戦争について記します。

おぼえておきたい史料読解のコツ 1

はじめに
アジア歴史資料センターの史料を各自参照することを前提としています。
(アジ歴の使い方については、以前書いたもの参照)


今回の史料

米国駐在海軍大尉秋山真之同國北大西洋艦隊乗組ニ関シ諸般ノ便宜ヲ受ケタル謝辞其筋ヘ伝達之件 明32.9

ref:B07090197000

第3画像を開いて下さい。


ポイント1 旧字体
「國」は問題ないでしょう。ほかには「與」が出てきています。これは「与」の旧字体です。旧字体と新字体の対応関係がすぐ思い浮かぶようにしましょう。
今回は出てきませんが、ぜひおぼえておきたいものとして、
舊→旧
體→体
團→団

などがあります。


ポイント2 「候」のくずし字
公文書や手紙などで用いられた丁寧語です。「候」は何度も繰り返し出てくるので、くずし字をおぼえてしまいましょう。
今回は、な感じ。ほかには、、あるいは単にと書かれることもあります。


ポイント3 決まり文句・言い回し
とくに一番最後の部分は、決まりきった言い回しがなされます。「可然」(しかるべく)、「御取計」(おとりはからい)、「相成」、「此段」、「御依頼」、「及〜」(〜に及ぶ)、「〜度」(〜したく)などがよく出てきます。


読んでみましょう

史料の件名から、内容が推測されます。ですので、件名、差出人、宛名、日付を先に確認することが重要です。名前の読みは難しいかもしれません。今回はメジャーな人物なので、たとえ読めなくても、Googleなどで“役職+名字”で検索すれば、すぐわかると思います。ヒントが得られるほかの手段を探すことも読解には重要となります。今回の史料では海軍の便箋が使われており(画像中央に注目)、すなわち海軍が差出し側であること、またレファレンスコードがBで始まる外務省所蔵史料であることから、外務省が受け手だろうという判断もポイントとなります。


短い史料なので気楽に読んでみましょう。
(内容には深く触れないので、米国士官名は読みとばしても構いません)


読解文の表示は↓をドラッグ、文字色を反転させてください。

(※米国士官名は省略)


前記諸官ハ米國駐在海軍大尉秋山真之
同國北太西洋艦隊乗組ニ関シ特ニ厚意ヲ
以テ諸般ノ便宜ヲ與ヘラレ候趣ニ付深ク感
謝ノ意ヲ表シ度候條可然御取計相成
度此段及御依頼候也
 明治三十二年九月一日
     海軍大臣山本権兵衛
  外務大臣子爵青木周蔵殿


いかがでしょうか。たとえ今回読めなかったとしても、多くの史料を読んでいくうちにだんだん、次ぎに出てくる言葉を予測しつつ読めるようになっていくと思います。今回はここまで。