日本近現代史と戦争を研究する

歴史学の観点から日本近現代史と戦争について記します。

日本政府、差別的な決議案の成立を牽制

決議案には、帰化資格がないものとして、日本人を徴兵対象から外す条項があった。これに対して日本政府は、カリフォルニア州外国人土地法の精神と同種の立法は黙過できないとして、国務省に意向を問いただした。国務長官代理からは、帰化権を標準とするものは不可で修正の要ありと色好い回答を得たのであったが…。


The Day Jul 28, 1917 Alien Draft Law Must Fix Treaties

  • 外交委員会は、条約改定がないかぎりヨーロッパの同盟国民を徴兵対象とするという軍事委員会によるチェンバレン決議案に反対するであろう。
  • 上院軍事委員会により、同盟国での入隊のために忠誠を放棄し、その後アメリカ軍に入ろうとする者のアメリカ市民権復帰のための法案に賛成の報告がなされた。数千のアメリカ人に影響する。


Chicago Tribune Jul 29, 1917  CHANGE ALIEN DRAFT MEASURE

  • チェンバレン上院議員は、今夜、条約で強制的兵役賦課が禁止されている国の外国人の徴兵への疑義に対応するための、決議案の書き直しを終えた。
  • 決議案は、アメリカに一年間以上住むヨーロッパの同盟国の外国人で、市民となる意図を宣言していない者は、徴兵対象となると規定する。中立国の国民は、条約で免除が規定されているなら、免除となり、そのような条約が適用されずに、免除を主張する外国人は、国外退去に90日の猶予が与えられる。
  • 決議案のほかの条項では、日本人および中国人をあからさまに免除し、同盟国の軍に入隊したアメリカ人は、国籍放棄となると規定している。


「第二四六号」本野外相より佐藤駐米大使宛 1917.8.2 JACAR:B07090170600

  • 「事実ナラハ右ハ明カニ帰化資格ノ有無ヲ差別的標準トナスモノニシテ加州土地法ト同一ノ主義ヲ採用スルモノナル所之ヲ黙過スルニ於テハ将来此種立法ノ続出ヲ見ルノ虞レアリ」
  • 「苟モ前記ノ如キ差別的標準ヲ包含セル立法ヲ見ントスル場合ニ於テハ直ニ貴官ニ於テ機ヲ失セズ国務長官ノ注意ヲ喚起シ移民法制定当時ノ如ク適当ノ修正ヲ加ヘシムル様適宜指導セラレ度」


「第二九一号」佐藤大使より本野外相宛 1917.8.5 JACAR:B07090170600

  • 「諸法案ニ対スル政府ノ態度ヲ国務長官代理ニ問ヒ糺シタル所元来大統領ハ初ヨリ総テノ此種立案ニ反対シ『マツカンバー』案ノ如キ比較的無害ナルモノモ猶不可トシタルモ仝案ハ僅ニ大統領ノ同意ヲ得上院ヲ通過シタル程ナルニ付其他ノ案ハ結局握リ潰シトナルベシト考フルモ万一通過ノ懸念アラバ国務省トシテハ条約ノ規定ニ違反セサル様注意ヲ与フルハ勿論殊ニ日本ノ懸念セラルル帰化権ヲ標準トスルノ不可ヲモ考慮ニ加ヘシメ適当ニ修正セシムルノ必要アリト認メ居レリト述ベ居タリ」