日本近現代史と戦争を研究する

歴史学の観点から日本近現代史と戦争について記します。

マッカンバー決議案とチェンバレン決議案が与える影響の差

両決議案を比べると、チェンバレン決議案の方がより広範囲な外国人を徴兵対象とするものであった。その分、審議には慎重が期されるべきものであった。新たに友好国外国人の入隊志願が許可されたことは、同決議案の審議に影響を与えた。チェンバレン決議案の可決は、9月まで待たなければならない。


The Toledo News-Bee - Aug 7, 1917 WHAT OF THE ALIEN LIVING IN AMERICA? HOW SHALL HE BE MADE TO DO WAR DUTY?

  • 政府は、国際法が外国人を兵役賦課から保護していること、三種類の外国人がいることを認識しなければならない。すなわちドイツと戦争している国の出身者、ドイツあるいはその同盟国出身者、中立国出身者である。
  • 大統領および国務省は、マッカンバー決議をイギリス、フランス、イタリア、ロシア、セルビア、ベルギー、ルーマニア、ポルトガル出身者に適用することに賛成した。ニューイングランド地域の非常に多くのフランス系カナダ人、ポルトガル人、40万人の健常なイタリア人に影響する。
  • 一方、オハイオやペンシルバニア、中西部に数多い、ポーランド人、ボヘミアンクロアチア人、スラブ人などには適用されない。彼らはオーストリア=ハンガリー国民である。もし彼らが米軍に徴兵され、捕虜になるようなことがあれば、反逆者として処刑されかねない。
  • 同様に、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、オランダ、スペイン、スイス国民にも適用されない。
  • チェンバレン決議案は、マッカンバー決議よりはるかに広範囲に影響を及ぼすものである。彼は同盟国民および中立国民、さらには敵国民の利用にさえ言及した。決議案は、一年以上居住の外国人を徴兵対象とするときっぱり規定する。ただし、敵国民、兵役賦課を禁止する条約の締結国国民は徴兵から除外される。
  • イタリア人は両決議の間で矛盾が生じる。国務省は、マッカンバー決議のもとで、帰化していないイタリア人の徴兵の同意をイタリアに求めているが、チェンバレン決議案のもとでは、これらのイタリア人は、イタリア外務当局が許可しない限り、徴兵から除外される。
  • さらにチェンバレン決議案は、条約締結国ではないスカンジナビア、オランダに影響を与える。また敵国民、軍務に適さない者でも、大統領の命令で、戦時中、他の目的に利用しえることを規定している。そして、オーストリア=ハンガリー国民の徴兵の道を開くこととなる。
  • 下院のヘンリー・バーネット議員(アラバマ)は、ドイツと戦争している国出身のどんな外国人も、徴兵に応じる忠誠なく、その免除を主張するなら、永久にアメリカ市民となる権利を否定し、国外退去させると規定する法案を提出した。それはまた大統領に、外国人の出身国や職業に関係なく、徴兵し、危険とみなし得る外国人を除外する権利を与えている。


New York Times - Aug 7, 1917 THE DRAFT BOARDS MAY ACCEPT ALIENS

  • 6日、新国民軍の兵員が友好国外国人の志願者に正式に開放された。クラウダー憲兵司令官は、国籍による徴兵免除の権利を放棄した者の入隊を即刻認めるよう指示した。
  • クラウダーの政府への電信では、多くの者が文明の共通の敵に対する戦争において、徴兵除外を拒否し、兵役を受け入れる意思を持っていることが報告から明らかになったとしている。


Troy Sunday Budget - Aug 12, 1917 ALIENS AND THE DRAFT

  • 議会及び政権は、すべての外国人が徴兵リストに含まれることとなった状況にあわせて、ペースを緩めている。国務省に対して、外国人の米軍あるいは各国への徴兵を協商国と交渉することを定めた法案は保留となっている。シンプルな解決策は、同盟国に限れば、各国との一時的な兵役交換協定であろう。しかし中立国との間にはそのような相互的な締約は、なされ得ない。
  • 徴兵を拒否した非敵国外国人の国外退去を要求するもう一つの法案は、ペンディングとなっている。この立案は、思慮に欠けていたがごく一般的な不満に対応したものであった。アメリカ市民が戦線へ送られる一方で、オーストリア、ハンガリー、ブルガリア、トルコを含む非敵性外国人に残留させ、報酬の多い仕事につけるより大きな機会を享受させるのだろうか。それが、バーネット法案の背景にある議論である。
  • それは穏当な議論ではない。戦争は、軍事的側面と同様、経済的側面においても争われるはずである。戦場において軍隊が必要となると同様、銃後における労働が勝利に必要である。非敵性外国人は、余剰労働力を構成する。フランス政府は、アジア系を耕作や粗野な産業に投入している。もし戦争がさらに二、三年続けば、ヨーロッパにおける全同盟国は、ますます友好国外国人労働力を投入せざるを得なくなるだろう。合衆国が、肉体的に農場や工場での労働に適する非敵性外国人を国外退去させることは、経済的に高くつく間違いとなろう。


New York Times - Aug 18, 1917 PRESIDENT FAVORS DRAFTING ALIENS

  • ウィルソン大統領は、17日のウィークス上院議員への手紙において、外国人徴兵への同意を表明。
  • マッカンバー決議案は、下院において議決を待っている。チェンバレン決議案は、まだ投票がなされていない。