日本近現代史と戦争を研究する

歴史学の観点から日本近現代史と戦争について記します。

米政府、まず英国およびカナダと徴兵協約締結

協約草案打診後、米政府は先にまず英国と協定を締結する方針をとった。1918年2月には、協約が調印された。カナダとの協約も同時になされた。しかし3月、協約の批准を前に、上院に国務省からストップがかかった。英国と米国の徴兵適齢の差がさらなる調整を必要としたのであった。6月に入り、改めて協約調印となり、同月下旬には上院が批准した。英国と一先ずの調印がなった2月には、議会において再び、徴兵免除者の市民権付与を禁止する外国人徴兵忌避者法案が動き出した。


「第五五七号」佐藤大使より本野外相宛 1917.12.19 JACAR:B07090170600

  • 「米国政府ニ於テハ其後詮議ノ結果各国ト一時ニ異ナリタル条約ヲ締結スルトキハ之ガ実行上多大ノ不便アルベキヲ思ヒ先ツ英国ノミト商議ヲ継続シタルガ最早殆ト結了ヲ告ケ不日調印ニ至ルベク其上ニテ該条約ヲ基礎トシテ之ト略ホ同一ノモノヲ各国ト締結シタキ積ニ付先般送付シタル草案ハ一先ツ廃案ト見做サレタシトノ事ナリ」


Boston Daily Globe - Jan 3, 1918 AMERICA'S ARMY OF ALLIED ALIENS

  • 合衆国で召集された最初のポーランド人派遣部隊が、無事に大西洋を渡り、ポーランド軍と合流し、フランスで戦っている。シカゴで編成されたセルビア人連隊の一部は、戦線へ向かうため、海岸部に到着した。
  • カナダ人連隊が昨年6月、ボストンで召集を始めて以来、何千もの米国在住イギリス人およびカナダ人が、加入している。
  • アメリカ市民を徴集し未帰化外国人を本国での兵役義務も課さないまま在留させていたことに関連して起こった問題は、解決しつつある。連合国の国民に米国あるいは本国の軍隊への徴兵を選択させる協約の締結がほぼ完了したとの報告がなされている。
  • 英国人の場合、義務はすべての18〜41歳に賦課される。現行案では、締結から60日以内に英軍に入隊しない者はすべて、米軍に徴兵され得る。連合国民で市民権の手続をしていれば、より軍務に服す責任を感じることとなろう。
  • もし連合国との合意がなったら、25000人の兵士を英国軍に、戦争前の我軍の平時編制と同程度をイタリア軍に、一連隊フルでルーマニア軍に、一旅団をギリシア軍に、そしてモンテネグロ人連隊を供給できよう。


New York Times - Jan 31, 1918 TO DRAFT BRITONS AND CANADIANS HERE

  • ランシング国務長官は、30日、マーシャル副大統領兼上院議長への書簡において、英国およびカナダとの交渉が実質的に完了したと述べている。三ヶ国の兵役適格者は、もし本国へ徴兵されない場合、在留国で徴兵され得ることとなる。
  • 国務長官は、書簡のなかで、法律および条件の面で英国およびカナダがより合衆国と近かったことが、交渉の進展につながったとしている。
  • 副大統領は、同書簡をチェンバレン上院議員に送付した。チェンバレンは、国務省の交渉に賛意を示した。


New York Times - Feb 1, 1918 DRAFT OF ALIENS

  • ランシング国務長官は、新聞におけるランシング書簡の不正確な引用に注意を喚起した。
  • アメリカ在住のイギリス人およびカナダ人は、20〜40歳が徴兵対象となり、イギリスおよびカナダ在住のアメリカ人は、1917年5月18日徴兵法の年齢に限って対象となる。


Reading Eagle - Feb 19, 1918 TREATY SIGNED

  • 19日、英米徴兵協約の調印が報告された。同協約により、合衆国は20〜45歳の在米英国人の徴兵が可能となり、一方、英国は21〜31歳の在英米国人を徴兵し得る。同文の別の協約がカナダとの間で交渉中。その後、カナダとの協約の調印も報告された。


New York Times - Feb 20, 1918 ARMY DRAFT TREATIES WITH BRITISH SIGNED

  • 19日、ランシング国務長官により米英および米カナダ間の相互的徴兵協約が上院に送られた。それらは、ランシングとアール・リーディング大使によって署名された。
  • 米英協約により、在米の25万人以上が徴兵対象となるとみられ、一方、米加協約により、少なくとも6万人が影響を受ける。


New York Times - Feb 27, 1918 DRAFT TREATY ACCEPTED

  • フランスおよびイタリアは、イギリスおよびカナダと調印したのと同様の協約を合衆国と実質的に合意した。
  • いわゆる外国人徴兵忌避者法案が、政権の反対にも拘らず、明日、下院で投票に上るのは確実とみられる。英国およびカナダとの協約以前、国務省の要求で同法案の投票は延期となっていた。


Boston Daily Globe - Feb 28, 1918 ALIEN SLACKER BILL PUT THROUGH HOUSE

  • 徴兵免除主張者の市民権付与を禁止する外国人徴兵忌避者法案が、27日夜、344対21で下院を通過し、上院へ向かった。
  • 政権は、徴兵協約交渉中の政府を妨害するとして該案に反対している。イギリスおよび英国との協約が調印され、フランスおよびイタリアともほぼ合意している。
  • 同法案通過の前、下院は、同法案は強制的な兵役賦課を禁ずる条約に優先しないとするロジャー議員の修正案を、235対133で却下した。


New York Times - Mar 22, 1918 DRAFT TREATIES HELD UP

  • 上院外交委員会は、英国およびカナダとの協約の検討を準備していたが、21日、ウィルソン大統領は、上院に対して、文書を国務省に返却するよう要望した。
  • 大統領の要望は、米国在留者の徴兵年齢に関して交渉に深刻な障害があるとの噂を生じさせた。しかし、修正は大したことない、表現上のもので、協約の根本に関るものではないといわれる。正確な条文がすぐに上院に戻されるとみられる。
  • 上院が一部の委員会の批准の遅れを疑問にし始めたときに、今回の大統領の動きがあった。遅れに関する憶測は、アメリカ在住のアイルランド系イギリス人の免除についての噂が含まれた。イギリスはアイルランド系の徴兵を控えており、それらを徴兵免除とするため、ある条項を利用するとみられる。この条項は、外交チャンネルにより、在留国民の徴兵免除を希望できるとするものである。しかし、委員会の議員は、この件に関してランシングとリーディング卿の間には、全く問題はなかったと宣言した。


New York Times - Jun 14, 1918 DRAFT TREATY IN SENATE

  • 上院外交委員会は13日、特別審議を開き、6月3日に調印された改訂英米徴兵協約をとりあげた。
  • 協約は、検討とランシング長官との協議のために小委員会に廻された。委員会メンバーは、改訂協約は、旧協約への異議を満たしており、批准の推薦が確実であると述べた。
  • 英米協約以前に、アメリカ在留の適齢イギリス人およびカナダ人への志願への呼びかけが昨夜、イギリスおよびカナダ召集使節のJSデニス大佐よりなされた。


New York Times - Jun 21, 1918 APPROVE DRAFT TREATY

  • 20日、上院外交委員会は全会一致で、改訂米英徴兵協約を承認し、批准を推薦した。協約は、上院非公開審理に廻ったが、議論は来週まで延期された。


New York Times -June 25, 1918 RATIFY DRAFT DEAL WITH GREAT BRITAIN 

  • 24日、上院は英国およびカナダとの徴兵協約を批准した。
  • 英国とアメリカの徴兵適齢の違いのため、上院は協約を批准するには、協約は大統領が21歳以下および31歳以上のすべての在英アメリカ人の徴兵免除を保証するまでは、効力を発生しないとの規定が必要であるとした。英国徴兵法では、適齢は18〜49歳である。
  • 合衆国がアメリカの徴兵適齢を在英アメリカ人に適用する条項を主張したため、協約交渉はしばらく滞った。これは英国徴兵法の改正を必要とし、時間を要するため、英国政府はそれを避けたがった。ランシング長官とリーディング卿との覚書によって、それが認められた。合衆国は条約上にその条項を挿入することは主張できないが、個人あるいは階層でもいかなる自国民をも免除する権利があるという条項を利用できることとなった。
  • この協約に従い、ウィルソン大統領は、在英の31歳以上および21歳以下のアメリカ人の徴兵免除の保証をなすであろう。もし合衆国が徴兵適齢を変更した場合、大統領は協約によって、免除を修正するであろう。
  • また協約は、もし英国が現在兵役賦課を行っていない地域へ徴兵を拡張させた場合、在米のその地域の者へも影響することを規定している。この条項は、アイルランド、オーストラリア出身の英国人に適用される。