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日本近現代史と戦争を研究する

歴史学の観点から日本近現代史と戦争について記します。

兵役の悪影響

○論説「兵営教育の欠陥」『読売新聞』1903.1.29−30

第一先づ兵営が罪悪を知らない純潔なる青年をして堕落せしむるといふことハ、今日何人も認る事実である、蓋し兵営ハ社会下層の壮年子弟の集る所で、中にハ目に一丁字なきものをさへ混て居るのであるから、其平常の話柄の如きハ、実に卑猥極るもので、其直接の監督者といふたら、矢張是等と其身分、教育に於て径庭のない上等兵と云ふものであるから、平常其兵卒の言動を取締る所が、却て自分の慰み半分、之を奨励する傾向があると云ふことである、而して啻に其談話の卑猥な許りでなく、彼等ハ其休日に相率ゐて常に汚はしい場所に出入りするのを唯一の快楽として居るといふ有様である、

第二の精神的虐待と云ふのハ、兵役の義務を果して帰る壮年子弟ハ、如何に勤勉な者でも、皆労働を嫌がる怠惰者となつて仕舞ふことである、其原因ハ大体二つある、一つハ兵営の精神教育と云ふものが、義勇奉公と云ふ唯非常に処する場合の道徳許り教へる結果、所謂社会的業務に対する熱心忠勇と云ふ様なことハ、之を忽にするからであらう、尚一つの原因ハ今の軍隊教育が常に百姓町人に柄にない武士的精神を鼓吹して、『貴様達ハ軍人でハないか、国家の干城でハないか』と、常に豪放、磊落、空威張の習慣を養はしむる結果、其壮丁が急に皆気位許り高くなり、遂に兵役が済んで家に帰ると、最早や昔の着実な考ハなくなつて、鋤鍬を取つて田野に労働することが嫌になり、さてこそ相帥ゐて巡査や憲兵の様な威張つて飯を食ふことを好む様になり、甚しきハ手の付けられない無頼漢になつて仕舞ふもの迄出来るのである、


このように兵士が堕落し、労働を厭うようになるのを防止する対策として、兵営内の娯楽の充実がなされる。