日本近現代史と戦争を研究する

歴史学の観点から日本近現代史と戦争について記します。

2007-08-01から1ヶ月間の記事一覧

小林英夫『日本軍政下のアジア』―「大東亜共栄圏」と軍票― 第二章

第二章は、「南方軍政はどのようなものだったか」というタイトルですが、 ここでは、軍票に関する部分を中心にみていきましょう。 日本は、1941年11月1日、「南方外貨標示軍用手票取扱手続」を策定し、 軍票印刷の準備をすでにはじめてました。 そして開戦と…

小林英夫『日本軍政下のアジア』―「大東亜共栄圏」と軍票― 第一章

第一章は、「中国戦線の物資争奪戦」についてです。 日本が中国における経済支配のためにとった政策は、次の通りです。 まず武力制圧したあと、行政機構と徴税機構を整備し、地主たちを組織して土地調査事業をおこなう。その一方、「敵産〔接収した相手側の…

小林英夫『日本軍政下のアジア』―「大東亜共栄圏」と軍票― 序章

日本軍政下のアジア―「大東亜共栄圏」と軍票 (岩波新書)作者: 小林英夫出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1993/11/22メディア: 新書購入: 1人 クリック: 10回この商品を含むブログ (3件) を見る 今回は、序章についてみていきましょう。 本書の課題は、次の…

軍票は回収すべきか その2

前回は、 南方開発金庫調査課『軍票の回収に就いて』(昭17.11)における 軍票回収論および回収不要論の考察についてみてきました。 今回は、その続きの部分である、 「大東亜戦争軍票回収の是非」についてみていきましょう。 前回もご紹介したように、本書…

軍票は回収すべきか その1

すでに引用したことがある、 南方開発金庫調査課『軍票の回収に就いて』(昭17.11)では、 軍票回収論および回収不要論について分析し、回収不要論をとることを主張しています。 以下、それについてみていきましょう。(なお同書の表紙には「金調第十三号」…

南方開発金庫とは

1941年末のアジア・太平洋戦争開戦以後、 東南アジアにおける通貨は、在来の通貨と軍票の2種類になり、 それ以外の通貨は使用を禁止されます。 在来の通貨は、発行機関が消滅したため、新規発行が行われなくなり、 また軍票は軍費支払の手段であって、企業…

軍票とは何か

軍票とは、軍隊が戦地や占領地で発行する通貨です。なぜ軍票を発行するのでしょうか。軍隊が占領地において物資を強制的に取り上げると、 住民の反発を招き、作戦に支障を来たすからです。 ●南方開発金庫調査課『軍票の回収に就いて』昭17.11、7頁 軍票は元…

「軍票インフレ」について

インフレに関して、軍票と物資は、言わばコインの表と裏の関係であって、 ふつう、軍票をコインの表とみるから、 「軍票インフレ」という表現になるのではないでしょうか。 今村忠男『軍票論』(1941年)は、次のように述べています。 軍票は一旦戦禍に見舞…