日本近現代史と戦争を研究する

歴史学の観点から日本近現代史と戦争について記します。

2010-01-01から1年間の記事一覧

下院、修正案審議停止、外交交渉で決着へ

ロジャー議員によるチェンバレン決議案の修正には国務長官から中止の要求があり、下院側もそれを容認した。大統領はロジャー案を支持していなかった。結局、外国人徴兵に関しては、国内法で強引に立法化するのではなく、外交交渉を通じ、同盟国の合意を得た…

下院、チェンバレン決議案修正の動き

下院に送られたチェンバレン決議案だが、ロジャー下院議員はその修正を積極的に働きかけた。条約により免除となる外国人をも国外退去させ、永久に市民権を与えないとする、より先鋭化した修正であった。国務省は、そこまでやるのは行き過ぎであり、条約の存…

上院、チェンバレン決議案を採択

チェンバレン決議案がようやく上院での採択に至った。報復的に敵国でアメリカ市民が徴兵されたらどうするという意見もあったが、国内の不公平是正がより重視されたのだろう。大統領が外国人徴兵の支持を表明したことも大きい。日本人に関しては、1911年の日…

マッカンバー決議案とチェンバレン決議案が与える影響の差

両決議案を比べると、チェンバレン決議案の方がより広範囲な外国人を徴兵対象とするものであった。その分、審議には慎重が期されるべきものであった。新たに友好国外国人の入隊志願が許可されたことは、同決議案の審議に影響を与えた。チェンバレン決議案の…

上院、マッカンバー決議案採択

佐藤駐米大使の報告にあったように、マッカンバー決議案がいち早く採択となった。チェンバレン決議案の採択は、友好国外国人の入隊志願を認めるという憲兵司令官の発言もあって、しばらく時間をみることとなる。 The Day - Jul 30, 1917 Alien Draft Bill Re…

日本政府、差別的な決議案の成立を牽制

決議案には、帰化資格がないものとして、日本人を徴兵対象から外す条項があった。これに対して日本政府は、カリフォルニア州外国人土地法の精神と同種の立法は黙過できないとして、国務省に意向を問いただした。国務長官代理からは、帰化権を標準とするもの…

チェンバレン決議案、委員会で可決

チェンバレン決議案の内容については各記事でまちまちで、議事録での確認が必要であろう。27日、軍事委員会が同決議案を可決し、次は本会議での採択へと向かう。28日には、アメリカ市民になれない外国人として日本人および中国人は徴兵免除と修正されるが、…

チェンバレン決議案の行方

しばらく、1917年ごろの米国における外国人徴兵問題について追いたい。 チェンバレン決議案は、多くの支持を得ながら、採決へと向かう。ただ、日本人など条約によって強制的な兵役賦課を禁止されていた外国人の存在が問題点として浮上していた。政府の意向は…

外国人も徴兵対象に・州の外国人比率(Jul 18, 1917)

Chicago Tribune Jul 18, 1917 DRAFT FOR GREAT ARMY IMMINENT 軍事委員会議長、チェンバレン上院議員は、徴兵を敵国外国人を除きすべての者に適用する共同決議の準備を始めた。この措置によれば、123万9865人の外国人がリストに追加されることとなる。下院…

友好国外国人、各国の徴兵対象に(Jul 18,1917)

The New York Times Jul 18,1917 OPENS WAY TO DRAFT A MILLION FOREIGNERS(PDF) 本日、オレゴンのチェンバレン議員によって上院に提議された共同決議では、アメリカにおける友好国外国人は、オーストラリアおよびカナダのように、兵役義務が免除されている…

米国から見た日本の国籍法改正(Jun 12,1916)

The New York Times Jun 12,1916 An Imperial Ordinance Which Will Cure Their Dual Nationality(PDF) 合衆国領内で生まれた日本人は、アメリカ市民であることが、憲法によって保証されているが、日本の議会を通過した国籍法の改正が裁可されるやいなや、彼…

Dual Citizenship(Oct 9,1941)

The Milwaukee Journal Oct 9,1941 Dual Citizenship 二重国籍問題が再び俎上に上っている。第一次大戦中にも深刻化したが、現在、それ以上の深刻化が懸念される。 多くの日系、イタリア系、ドイツ系のアメリカ人はまだ母国によって各々の国民とみなされてい…

国籍法改正に関して(韓国)

KOREA JOONGANG DAILY Nov 13,2009 On changing citizenship laws(魚拓) 韓国法務部は、国籍法を改正し二重国籍の許容範囲の拡大を提言する予定だと発表した。提言の趣旨は、単一国籍政策の制限を緩めることにある。 国外で勤務あるいは研究に従事している…

国外居住者、徴兵回避のため帰省延期(スーダン)

arabnews.com Nov 23, 2010 Sudanese expats skip vacations home to‘escape conscription’(魚拓) 国家を南北分離するか否かに関する国民投票が、来年はじめに予定されている。ジッダにおけるスーダン領事館筋は、政府がすでに強制的徴兵を布告したという…

男子徴兵は合憲(韓国)

koreatimes.co.kr Nov 25,2010 Conscription of men constitutional 男女同権の点から女性もまた男性と同じように徴兵されるべきか。韓国の憲法裁判所は、ノーとの判断を下した。 18歳以上の健康な男子のみに二年間の兵役を命じる韓国の法律は、憲法における…

ドイツ徴兵制停止の行方

ドイツ徴兵制停止の行方に関して、ガーディアンの次の記事は、とても冷やかにみている。 guardian.co.uk Guardian Weekly Letters, 10 December 2010 ドイツは、来夏までに徴集を廃止する。憲法に規定があるため徴兵制自体は廃止できない。改革達成までの道…

セルビア、軍の現代化で徴兵制停止へ

以下は、前記事より、詳しく報道している。 ISA INTEL Dec 1, 2010 Serbia Set to End Conscription as it Modernizes Its Military 徴兵制停止の決定は、次期議会で承認される見込み。 そうすれば来年一月より、兵務は志願制となる。 二世紀に亘る伝統的な…

セルビア国防相、徴兵制廃止を推進

winnipegfreepress.com 2010.12.2 Serbian defence minister urges lawmakers to abolish draft as part of military reform セルビアのDragan Sutanovac国防相が徴兵制廃止を推進。 現政権は、民主党、G17プラスを中心とする親EU派連立政権(国防相は、民主…

屍山血海的南京 敵在南京之空然暴行(續)

前エントリの続き。 新中華報 421 1938.3.1 屍山血海的南京 敵在南京之空然暴行(續) 嗣經國際救濟委員会竭力交渉結果、敵兵明目張胆之獣行略見減少。但其毀絶人性之殘暴程度、并未降低、於是不分晝夜、紛紛擧牆而入収容所、毎見婦女、不暇佔地、即強行姦淫…

屍山血海的南京 敵在南京之空然暴行

当時延安で発行されていた陝甘寧辺区政府機関紙『新中華報』についてはこれまで、第443期(1938.6.30)の「日本侵略者一年来の暴行」という記事が南京事件に関する最初の言及とみられてきたが、第420期(1938.2.25)に、事件を報じる記事が掲載されているの…

新聞雑誌にみる台湾征服戦争

先のエントリでは、時事新報において、「台湾戦争」、「恰も兵力を以て征服したるに異ならず」と認識されていたことをみた。以下の記事は、時期的により早いものであり、いまだ征服戦争の実績が上がっていない時期のものである。 ■「台湾を喰詰者の巣窟と為…

時事新報における台湾征服戦争認識

「戦死者の大祭典を挙行す可し」『時事新報』1895.11.4 九月二十九日までの報告に拠れば、日清役並に台湾戦争に於て我軍人の戦死せし者八百五十一人、傷死二百三十三人、病死五千三百八十五人、合計六千四百六十九人して、其後の死者も少なからざることなら…

台湾とフィリピンの比較―「日台戦争」と「米比戦争」

■岡本公一「比較植民地主義試論」『歴史学研究』867、2010.6 アジアに現れた植民地帝国として、日本とアメリカは共通点を有する。日本は1895年に台湾を、アメリカは1898年にフィリピンを版図に組み入れた。それぞれ日清戦争後、米西戦争後、条約により戦勝国…

円満な韓国併合像と併合反対運動

■森田芳夫『国史と朝鮮』(緑旗連盟、1939年)緑旗連盟は、1933年に京城で結成された社会教化団体である。森田は、京城帝大の朝鮮史学科出身であった。本書の肩書きには、「緑旗日本文化研究所員」とある。 本書は「今日の朝鮮問題講座」シリーズの第6巻に当…

『いのちの戦場―アルジェリア1959』

アルジェリア民族解放戦線(FLN)がゲリラ戦を続けるアルジェリアの最前線へ、フランス軍の若い理想主義的な士官が赴任するが…というシンプルなストーリー。説明的な台詞は少なく、示唆的で興味深いシーンが続く。 頼りない士官と経験豊富な下士官の関係…

第2次大戦中の米軍女性パイロット初表彰

AFPBB News 2010年03月11日「米議会、第2次大戦中の米軍女性パイロットを初表彰」 【3月11日 AFP】10日、第2次世界大戦終結から60年を経て、当時米空軍にパイロットとして従軍した女性たちが初めて、米議会で表彰された。 彼女たちが従軍した部隊の名称は、…

おぼえておきたい史料読解のコツ 3

今回の史料 川村参軍より達相成此旨相達 本営より 明10.9.5 ref:C09082101000 ポイント1 別紙 本文に続いて、別紙を添付するというのは、よくあるパターンです。 「別」の字が特徴的なので識別しやすいと思います。 ポイント2 合字 今回出てくるのは 「より…

2005年自民党新憲法草案策定過程と「国防の義務」

2005年自民党新憲法草案策定過程における「国防の義務」の議論に関して、新聞記事で追ってみた*1。 2003.12.17 16日、自民党憲法調査会は、総選挙後初の総会を開いた。05年に憲法草案策定を公約に掲げていたことを受けて、プロジェクトチームが要綱をまとめ…

おぼえておきたい史料読解のコツ 2

今回の史料人夫使用願の件 明27.8.5ref:C06031003000 第1、2画像を開いて下さい。 ポイント1 高級副官文書の発信元ととして陸軍大臣や次官とともによくでてきます。陸軍省副官は大臣官房に属し、大臣・次官の命を承けて公文書の浄写や注記、接受、発送の事務…

おぼえておきたい史料読解のコツ 1

はじめに アジア歴史資料センターの史料を各自参照することを前提としています。 (アジ歴の使い方については、以前書いたもの参照) 今回の史料米国駐在海軍大尉秋山真之同國北大西洋艦隊乗組ニ関シ諸般ノ便宜ヲ受ケタル謝辞其筋ヘ伝達之件 明32.9ref:B0709…