日本近現代史と戦争を研究する

歴史学の観点から日本近現代史と戦争について記します。

書庫

2005年自民党新憲法草案策定過程と「国防の義務」

2005年自民党新憲法草案策定過程における「国防の義務」の議論に関して、新聞記事で追ってみた*1。 2003.12.17 16日、自民党憲法調査会は、総選挙後初の総会を開いた。05年に憲法草案策定を公約に掲げていたことを受けて、プロジェクトチームが要綱をまとめ…

明治二十七八年戦役と臨時軍事費

明27法律第24号 臨時軍事費特別会計法 ・清および朝鮮との交渉事件に関する臨時軍事費は、一般会計と区別して処理する。 ・臨時軍事費の歳入歳出は、明27.6.1より事件終局までをもって会計年度とする。 明29法律第10号 臨時軍事費特別会計ニ関スル件 ・臨時…

入営当初初年兵内務教育計画表

■第五中隊『入営当初初年兵内務教育計画表』 どの第五中隊かは不明。 年代についても不明であるが、1/10(水)〜2/21(水)の計画を記している。 内容から大正期と思われるが、もしそうなら、曜日上、大正元年、6年、12年の何れかになる。 入営後、最初の4日…

西南戦争と白兵戦

関連 http://d.hatena.ne.jp/higeta/20090921/p1 http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20090918/p2 軍学校の受験に関して調べていると、主に中学生を対象としていたと思われる『学生』という受験雑誌に、陸軍大将・浅田信興が、西南戦争の回想を寄稿しているのをみ…

国家社会主義メモ

http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20090608/p1#cに関連して、補足&メモ。 ■木下好太郎『ヒットラーと獨逸ファシズム運動』内外社、1932 現代ドイツに於ける急激なる国家社会主義の擡頭に就いては、資本主義世界の示顕する現代の未曾有の不況と、その一環をなす…

新聞の検閲

○明42.5.5 法律第41号 新聞紙法 第27条 陸軍大臣、海軍大臣及外務大臣ハ新聞紙ニ対シ命令ヲ以テ軍事若ハ外交ニ関スル事項ノ掲載ヲ禁止シ又ハ制限スルコトヲ得 日中全面戦争が開始されると、同条に基いて、以下が施行された。 ○昭12.7.31 陸軍省令第24号 ○昭1…

近代的権力とホロコースト

■佐藤卓己「ファシズムの時代」『世界』634、1997.4 著者は、「強制収容所は野蛮の延長にある暴力ではなく、むしろ規律化された近代的権力の極致であった」と端的に述べる。 ある程度仕方のないこととはいえ、もっぱら「非合理的な」反ユダヤ主義によってホ…

89年後の回答

■『週報』396、昭19.5.24、「週言」 嘉永六年、ペルリは黒船を率ゐて浦賀に来り、幕府を威嚇し開港を求めた。幕府は狼狽して返答ができず、もみにもんだ挙句、結局開港することになつたが、これはペルリに対するほんとの返答ではなかつた。ペルリに対する真…

「日本の近代性」

■ウィラード・プライス「日本の近代性」『観光』8-3、昭15.8 著者は、米国人記者。 日本がいかに新しいものを取り入れながら、 古いものを墨守しているかを繰り返し主張している。 日本中至る所で英語は話されると聞いてゐたが、私達の村では英語を話す者が…

オ前ハ米英ノ廻シ者ダ

■「御親拝ニ恐懼感激セル臨時町内会開催状況ニ関スル件」富山県知事より内相・近隣知事宛、昭17.12.18 JACAR ref:A06030090200 第50画像 富山県知事より優良町内会として表彰された、高岡市伏木石坂町内会では、 「大東亜戦争一周年」に当って、以下のような…

宣戦布告前の空襲の当然視

■帝国在郷軍人会札幌支部『良民』防空号、1936、序言 近代科学の異常なる躍進、就中航空機の驚畏すべき発達増加は将来戦に於ての宣戦布告と同時に、否、寧ろ其の以前に強力なる空軍を以て一挙に国境を突破して敵国の政治経済の中心或は工業都市に対して爆弾…

男女の関係

■橋亭主人『兵営百話』1901.10 著者は、義和団事変に「従軍」した経験をもつ。 フランスの兵営では、下士官が妻子とともに営内に居住していることについて、 次のように述べている。 外国では男女の関係が非常に神聖にしてある、又婦人の位置が日本の如く卑…

想起される白虎隊や戦国時代

■「国難、撃敵の好機たらしめん」『週報』第403・404合併号、昭19.7.19 「サイパン島の在留邦人は終始軍に協力し、およそ戦ひ得る者は敢然戦闘に参加し概ね将兵と運命を共にせるものゝ如し。」大本営発表のこの一節に、我々は、日本人である以上、最後の瞬間…

殉国精神の顕現

■大本営海軍報道部「サイパン島の戦訓」『週報』第403・404合併号、昭19.7.19 サイパン島在留同胞は六月十五日、敵上陸するや、老若男女を問はず皇軍に協力一体となつて挺身し、銃を執り得る者は悉く銃を執つて、皇軍将兵と共に敵陣に突入して、壮烈な戦死を…

林總『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』

マンガ 餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?作者: 武井宏文,林總出版社/メーカー: ダイヤモンド社発売日: 2008/04/18メディア: 単行本購入: 9人 クリック: 31回この商品を含むブログ (25件) を見る NHKドラマ『監査法人』を観てて会計に関心が。…

恩給と戦犯

昭和21年1月、政府はGHQの指示を受けて、恩給の給与を停止する。 昭20.11.24 SCAPIN 338 “Pensions and Benefits” 1. The Imperial Japanese Government is directed to take the necessary steps as rapidly as practicable and in no event latar than …

真の決戦場は国民の胸底三寸にあり

■大本営陸軍報道部「粛として顧る」『週報』424・5合併号、昭19.12.8、10頁 嘗てラバウルの戦ひ酣なりしとき、一部の論者は「ラバウルこそ日米の決戦場」であるとなし、仮りにラバウルを失ふが如きことあらんか、忽ち日本は敗北に陥るかの如き極論をあげつら…

衆院委員会(46.7.9)における芦田均の第9条に関する発言

1946年7月9日、衆議院委員会において、 芦田均(日本自由党)は第9条に関して、次のように発言している。 私は次の如き結論が正しいのではないかと思います。不幸にして自衛権の問題に付ての政府の答弁は、稍々明瞭を欠いて居ります。自衛権は国際連合憲章に…

「総ては戦争挑発者ルーズヴエルトの責任」

■「編輯余禄」『北海道統計』101、昭16.12 昭和十六年十二月八日こそ銘記せらるべきである。隠忍久しきに及んだ皇軍も、遂に、新しき世界秩序建設の為めに、勇躍干戈を採つて起つた。 緒戦、瞬時にして米英太平洋艦隊を覆滅し布哇に、馬来に不滅の戦果を収む…

陸軍特別大演習沿革

明治15年3月20日 「野外演習軌典」 明治22年陸達第19号「陸軍軍隊機動演習条例」(明22.2.15) 同年同第142号「野外要務令草案」(明22.9.30) 同年8月 野外要務令改正 大正4年軍令第11号「秋季演習令」 同13年同第2号「陸軍演習令」 (以下、『北海道統計』第41…

「陸戦条規中兵卒ノ記憶スベキ事項」

■軍需商会編纂部『軍隊精神教育口授資料』1911年 「緒言」には次のようにある。 本書ハ著者カ多年隊附間ニ於テ精神教育ノ為メ下士卒ニ口授セシ事項ヲ網羅シテ一問題毎ニ談話的ニ説述シタルモノトス 捕虜の扱いについては、 第二百七十一問題 陸戦条規中兵卒…

靖国参拝遺児たちの作文

銃後の社会史―戦死者と遺族 (歴史文化ライブラリー)作者: 一ノ瀬俊也出版社/メーカー: 吉川弘文館発売日: 2005/11メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 12回この商品を含むブログ (7件) を見る 一ノ瀬俊也『銃後の社会史』(歴史文化ライブラリー203、2005)…

「支那軍隊」の変化

■雨宮巽「新支那の実相に就いて」(『支那』昭12.5抜刷)著者は、「前南京駐在武官陸軍省新聞班」の歩兵中佐で、 昭和7年に南京に赴任し、2年余勤務した。 昭和2〜5年には、「揚子江筋」に赴任。 当時(引用者注―満州事変前)の情況に付て一言御参考に申しま…

朝鮮総督府『我国は朝鮮で何を為したか』昭7

明治四十三年日韓併合行はれ、我国が朝鮮統治の局に当つてから、星霜茲に二十余年、此の間我国は朝鮮に於いて何を為したか。即ち我国は、朝鮮統治上如何なる施設計画を遂行し、半島の産業文化を如何に発展向上せしめ得たか。又朝鮮の民衆をして如何なる恵沢…

「表象」と「歴史学的な知」

■安丸良夫「総論 表象の意味するもの」歴史学研究会編『歴史学における方法的転回』青木書店、2002 たしかに「史料」はなんらかの「表象」であり、私たちはこの「表象」の意味作用を通じてしか「事実」に迫ることができない。さらに私たちは、こうした「表象…

民主化と知る権利

■北海道弘報課『道政だより』第42号、1951.9.20 道庁の仕事は、直接間接に皆さんが非常に苦心して納められている税金によつて、まかなわれているのです。皆さんの税金がどのように使われているか?皆さんの税金を使つて、どのように仕事が進められているか?…

戦争学習と叙述と実践

戦争非体験第三世代にどう教えるか。 教師の言葉がどう伝わるかについて自覚的でなければならない。 ■今野日出晴「歴史教育の語られ方」『歴史評論』646、2004.2 私自身の小さな経験でいうなら、戦争学習において、生徒や学生たちは、戦死者や被爆者の数が実…

紙面に掲載される捕虜殺害

『静岡新報』1932年5月1日付には、戦争熱が高揚するなか、 満洲独立守備隊第六大隊第四中隊兵士の次のような知人宛ての便りが紹介されている。 (荒川章二『軍隊と地域』青木書店、2001年) この戦闘で支那兵を五十名ばかり捕虜とし武装解除して全部縛り上げ…

ジョン・H・アーノルド著・新広記訳『歴史』

歴史 ― HISTORY (〈1冊でわかる〉シリーズ ― Very Short Introductions日本版)作者: ジョン・H・アーノルド,新広記出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2003/06/06メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 81回この商品を含むブログ (15件) を見る 著者は、フラン…

<わたくし>の字引きと<おおやけ>の字引き

■今野日出晴「歴史教育の構図」『歴史学研究』755、2001.10 「構造主義的な学習論」をめぐる加藤公明―大町健論争について、 次のようにまとめられている。 ここでするどく問われたのは、教室の「説得性」か、学界の「共有財産」かということであった。教室に…