日本国民「再教育」の不徹底さ
南京事件論争史―日本人は史実をどう認識してきたか (平凡社新書)
- 作者: 笠原十九司
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2007/12
- メディア: 新書
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笠原十九司氏は、ニュルンベルク裁判で膨大な公判記録と判決が公刊されたのに対し、
東京裁判については、アメリカは資料が広範に利用できる措置を
採らなかったことに関して次のように述べている。
もしもGHQやアメリカが当初試みたような南京事件を日本国民の記憶とすることを本当にめざしたのであれば、パール判事でさえ認めざるをえなかった圧倒的な証言記録を公表し、新聞にも大々的に報道させ、日本国民に読ませるようにしたはずである。判決文でさえ、当時広く国民に全文を読ませるような措置をとらなかったのである。
「NHKスペシャル パール判事は何を問いかけたのか―東京裁判、知られざる攻防」(二〇〇七年八月一四日放映)によれば、マッカーサーは東京裁判で日本軍の真珠湾攻撃を戦争犯罪として裁けばよいと考え、国際人道法によって日本の戦争犯罪を徹底的に裁くことには強い関心はなかったのである。彼が占領統治をスムーズにするために天皇の戦争責任を免責し、東アジアの冷戦が開始されると東京裁判にも、日本国民の「再教育」にも熱心でなくなるのは当然といえた。
(97-98頁)