日本近現代史と戦争を研究する

歴史学の観点から日本近現代史と戦争について記します。

昭8.2.26 社説「四十二対一」


■社説「四十二対一」『北海タイムス』昭8.2.26


24日の連盟総会において、日本に対する勧告案が
「四十二対一」の絶対的多数で採択され、連盟との「絶縁」が決まった。


社説子は、未曾有の「国難」にあるとして、「国民の覚悟」を求める。

吾人が予て屡々論じたるが如く、国民の覚悟を必要とする今日より甚だしきはないのであつて、吾帝国の現在の地位は史上国難の最たるものとして今尚吾人の血を湧かしてゐる文永、弘安の両役近くは今回の満洲事件の前衛たる日露の戦役の夫に比し優るとも決して劣らざる苦艱の真つ只中にあるのである。

インフレ景気に有頂天になつてゐる話は聞くが、吾帝国が国際的孤立状態に陥つて居り、勢ひの趨くところ、或は経済封鎖を受くるの破目に立ち至つた場合にはどうするかを真剣に考へてゐる人は果して何人あるであらう。吾陸海軍の精鋭を疑ふ訳ではないが、一朝東亜の風雲急にして吾陸海軍の全勢力を傾けなければならない日が来たときに国内の状態は一体どういう風に変化するかを慮かつてゐる人は抑々何人あるであらう。


日露戦争満州事変の「前衛」として捉え返しているのが興味深い。
また、経済封鎖があるのかどうかが次の焦点となっていく。


「挙国一致」を言いつつ、特に「無産階級」を考慮した政策を政府に求めている。

個人的利害の打算はこの際一擲せられなければならぬと同時に、政府としては国民中の大多数を占むる中産階級以下、特に無産者に対する生活保障に万全の考慮を払はなければならない筈である。即ち外敵を破るは易くとも内敵を破るは至難中の至難事であるからである。