日本近現代史と戦争を研究する

歴史学の観点から日本近現代史と戦争について記します。

戦争学習と叙述と実践


戦争非体験第三世代にどう教えるか。
教師の言葉がどう伝わるかについて自覚的でなければならない。


■今野日出晴「歴史教育の語られ方」『歴史評論』646、2004.2

私自身の小さな経験でいうなら、戦争学習において、生徒や学生たちは、戦死者や被爆者の数が実感をともなって理解されず、人間の生と死をくぐり抜けた数としてとらえられていなかった。加害についても、その犯罪性ゆえに、自分とは関わらないものとして、拒絶され、反発さえ招いていた。その意味では、被害も加害も、抽象化され、余所事として把握されていた。そこで、兵士たちの日常や手紙、そして戦争文学を素材にしながら、普通の人びとが、軍隊に組み込まれ、「敵」と戦い、村に帰ってくるという軸で、軍隊体験と戦場体験の叙述を試みた。それは、「政治や経済、あるいは明治維新といった大文字の歴史から時代を描くのではなく、いわば、小文字の歴史のなかに大文字の歴史を読み解こう」という方針に共感して試みたものであった。「固有名詞をもった人びと」の「さまざまな体験」に宿る全体性を描こうとした。
次に、生徒や学生と同じ年代の青年たちの軍隊生活や戦場経験を軸に、授業実践を試みた。
(44頁)


ここに言う、「軍隊体験と戦場体験の叙述」は、
大門正克ほか編『戦後経験を生きる』(吉川公文館、2003年)所収の論文を指す。


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