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日本近現代史と戦争を研究する

歴史学の観点から日本近現代史と戦争について記します。

外交会議第三会期(1976.4.21〜6.11)


以下は、外交会議第三会期の審議状況をまとめた国連事務総長報告書(1977)(竹本正幸・楠美智子「人道的理由で使用の禁止又は制限の対象となる焼夷兵器その他の特定通常兵器(一)」『関西大学法学論集』28-2、1978.6)による。


焼夷兵器に関する議論では、
オランダは、「焼夷弾薬及び火炎弾薬の使用を文民密集地を含む地域において制限しようとした」。

火炎弾薬については、その弾薬の基剤となっている焼夷剤、すなわち「膠質化炭化水素」(ナパーム弾も含まれる)という言葉で定義されている。文民密集地域でのすべての焼夷兵器の使用禁止(軍事目標に対する場合は除く)に加えて、この提案は、軍事目標に対する場合でさえも、火炎弾薬による空中攻撃を禁止することになるであろう(但し、地上兵力間の戦闘が起こり、または、その危険性がある地域に軍事目標がおかれている場合はこの限りではない)。
(163頁)


一方、ノルウェーは、「一般住民に対してと同様、戦闘員に対する焼夷兵器の使用の禁止を求めた提案」を提出した。


注目されるのは、スウェーデンの主張である。

スウェーデンもまた、あらゆる場合における「火炎弾薬」の使用を禁止すべしとの提案を含む作業文書(CDDH/IV/208)を提出した。この中で、火炎弾薬は、「主として、人間に火傷を負わせるよう設計されたものか、または、目標に向けて発射された物資の化学反応により生ずる火炎作用で、目的物に放火できるよう作られたすべての弾薬」と定義された。スウェーデンは、このような兵器の中には、火炎放射器、ナパーム爆弾、白燐手榴弾、及び散布型物資を含むその他の弾薬があると主張した。
(164頁)


すなわち、同国が禁止を主張する「火炎兵器」の一つに、「白燐手榴弾」*1が含まれているのである。
「白燐」を基剤とする弾薬の種類を手榴弾に限定しているのかどうかは、不明であるが、
同国の「火炎弾薬」の定義からすれば、「白燐」を基剤とするすべての種類の弾薬が、それに含まれるであろう。


この会議においても、意見が二つに分かれた。

若干の代表団は、焼夷兵器のもつ軍事的価値について否定はしなかったが、このような兵器の使用は、禁止するべきであると主張し続けた。その理由は、これらが非常に重大な医学的結果を生むからであり、また、これらの使用が所有国の国家安全にとって重要でないからであった。ある代表団は、ジュネーヴ諸条約に対する第一追加議定書案の第三三条が、この禁止のための強固な道徳的、法的根拠を与えているから、同条に示された原則を適用する方法を案出することが、アド・ホック委員会の課題であると主張した。他方、若干の代表団は、近接戦闘で、焼夷兵器が非常に貴重な援護をなし、また、それらを選択的に使用できるという見解をくり返した。また、一代表団は、入手した情報によると、代替兵器の使用により死者及び傷者の数が増大し、その結果、ナパーム弾の使用禁止が結局のところ人道的観点からみて何の利益もないであろう、と述べた。
(165頁)


規制賛成派は、「医学的結果」を鑑みた人道的配慮や、焼夷兵器の使用が国家の安全にとって、
真に重要でないことを主張し、
一方、規制反対派は、軍事的な有用性や、
焼夷兵器に代わる兵器の使用により犠牲者が増大することなどから反論している。


もし規制兵器に代わって、それ以外の兵器を用いたら
犠牲者が余計に増大するというような反論のパターンは、
昨今の白燐弾をめぐる議論においてもみられたところであり、興味深い。

*1:73年の国連事務総長報告書の翻訳の際、竹本氏は、「white phosphorus」を「黄燐」と訳しているが、ここでは「白燐」とされている。筆者も「黄燐」を用いているが、ここではそれに倣った。