日本近現代史と戦争を研究する

歴史学の観点から日本近現代史と戦争について記します。

2007-12-01から1ヶ月間の記事一覧

昭8.2.9 社説「東洋保全主義」

■社説「東洋保全主義」『北海タイムス』昭8.2.9 社説子は、手を変え品を変え、日本の行動を正当化しているわけだが、 今回は、アメリカのモンロー主義に日本をなぞらえる。 当時の合衆国と神聖同盟との関係は、今日の日本と国際連盟のそれと、善く似よつてゐ…

日本国民「再教育」の不徹底さ

南京事件論争史―日本人は史実をどう認識してきたか (平凡社新書)作者: 笠原十九司出版社/メーカー: 平凡社発売日: 2007/12メディア: 新書購入: 2人 クリック: 200回この商品を含むブログ (23件) を見る 笠原十九司氏は、ニュルンベルク裁判で膨大な公判記録…

昭8.2.8 社説「最後の勝利」

■社説「最後の勝利」『北海タイムス』昭和8年2月8日 連盟脱退が取り沙汰されているなか、 社説子は、強気である。 もとよりわが国は、好んで連盟と衝突し、支那と争はむとするものではないが、わが正当なる主張は、如何なる威嚇、全世界が一束となつて来ても…

南京事件否定論の二重構造

■笠原十九司「南京事件論争の過去と現在」『世界』773、2008.1 否定論には二重構造があります。すなわち、<南京事件はまったくなかった>という全面否定と、<三〇万人の虐殺はなかった>という部分否定を意図的に混同させて用いる「論理」構造です。完全に…

歴史学批判

ひろたまさき「パンドラの箱―民衆思想史研究の課題」酒井直樹編『ナショナル・ヒストリーを学び捨てる』東京大学出版会、2006年より。 問題は、認識論的な不可知論をもって歴史学の存在を否定する傾向や、歴史修正主義に顕著な主観主義の傾向であり、もっと…

昭8.2.3 社説「満洲事変と米国の容喙」

■社説「満洲事変と米国の容喙」『北海タイムス』昭和8年2月3日 社説子は、米国のダブルスタンダードを批判する。 朝に国際平和を唱へ、夕に正義人道を説く米国が、最近の対外政策に於ては、非常なる強硬政策を採つてゐることが、窺ひ知られるのである。即ち…

昭8.2.1 社説「日本と連盟」

■社説「日本と連盟」『北海タイムス』昭和8年2月1日 社説子は、国際連盟において「満洲国」を否定する勧告案が採択される見込みが大きいなか、 軍部の即時連盟脱退論に賛同する。 吾人は、此点においては、軍部の主張に共鳴するを禁ずることが出来ない。 で…

生徒が社会科で出会う「問題」の三層構造

村井淳志『歴史認識と授業改革』教育史料出版会、1997年、130-132頁より。 歴史認識と授業改革作者: 村井淳志出版社/メーカー: 教育史料出版会発売日: 1997/12メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (1件) を見る 第一の層に属する問題は、学…

陸軍防衛召集手続経過一覧

陸軍省兵備課「陸軍防衛召集規則の要綱」『偕行社記事』819、1942.12より。 1.防衛召集取扱者 → 在郷軍人又は国民兵 (調査) 2.防衛召集担任官 → 防衛召集取扱者 (人員内達) 3.軍司令官(又は師団長) → 防衛召集担任官 (人名報告) 4.軍司令官(又は師…

争点のカスケード

ふたたび、荻上チキ『ウェブ炎上』より。 サイバーカスケードといえば、例えばA対Bという意見の対立があったとして、Aの方向に意見が極端に傾いてしまうこと、あるいはAとBの根深い対立が築かれてしまうことが問題とされます。しかしここで重要なのは、…

それを通じて何を明らかにしたいのか

ふたたび、田中禎昭「先行研究をどう整理するか」より。 研究が専門化すればするほど、研究対象は多様に個別分散化するのは必然的なことだが、大切なことは、自分がなぜ、論題に掲げたような個別的限定的な素材・対象を研究するのか、本当は、それを通じて何…

侵略戦争の弁証法

先に、満州事変以後の流れがほぼ予測されていたことを紹介しましたが、 油井大三郎氏は、その流れを「侵略戦争の弁証法」と表現しています。 ■油井大三郎「世界史のなかの戦争と平和」『岩波講座世界歴史25』1997 ナチス・ドイツの場合には、目的に大義のな…

盲目の愛国心

■竹越與三郎『人民読本』1913、34-38頁 愛国にせよ、忠義にせよ、余は其の盲目なるざらんことを希ふ。盲目の愛国心は、却つて国家の目的を過つを免れず。 然るに世には国家の事といへば、之を非難せざることを以て、愛国心とするものあり。奸雄また之に乗じ…

第二次世界大戦の性格

■木畑洋一「第二次世界大戦の構造と性格」歴史学研究会編『講座世界史8 戦争と民衆』東京大学出版会、1996 帝国主義国間の帝国主義戦争として性格を概括しうる第一次大戦に比べて、第二次世界大戦の性格は複合的であった。その複合性はしばしば次の三つの基…

予測どおりの日本のアジア政策の破綻

帝国在郷軍人会札幌支部『良民』208(1934.1)に、 「紐育の『フオーリン・アツフエヤズ』誌十月号に、コロンビヤ大学教授ジヨン・イー・オーチヤードの寄稿した『日本のアジア政策は経済的に何を齎したか』と題する論文」が要約して紹介されています(9−10…

エコチェンバーとは

以前のエントリでみたように、 内田樹氏は、インターネットでの情報収集の問題点が「選択の反復」によって、 「臆断」を強化していくことにあることを指摘していました。 荻上チキ氏も、『ウェブ炎上』において次のようにより詳細に述べています。 ウェブ炎…

問題意識を持つことの大切さ

引き続き、 田中禎昭「先行研究をどう整理するか」より。 歴史の勉強・研究の出発点は、問題意識を持つことである。実証的な歴史研究は、史料を読むことから始まるが、しかし、意識的なものであれ無意識的なものであれ、史料を読む側に問題意識がなければ、…

先行研究に依拠すること

○田中禎昭「先行研究をどう整理するか」歴史科学協議会編『卒業論文を書く』山川出版社、1997 「歴史の勉強」は、問題意識(「なぜ、どうして」の問い)を持ち、文献(先学の研究成果)を読み学ぶことを通じてその解決を図ろうとする営みである。一方、「歴…

通説を調べる

すべて常識的なことがらですが、 「これこれ云々が通説的理解である」とされている記述をもとに、その典拠になっている研究を確認してみる。 主要な研究を読んで、多くの研究において共通認識となっているところを自ら判断する。 未だ通説的理解の形成足りえ…

防衛召集問答 陸軍防衛召集規則の解説

『週報』314号、1942.10.14に、 陸軍省報道部「防衛召集問答 陸軍防衛召集規則の解説」が掲載されています。 (アジア歴史資料センター ref:A06031047600) このように『週報』には、法令の解説が掲載されることがあり、 法の意図や運用を分析するに当たって…