日本近現代史と戦争を研究する

歴史学の観点から日本近現代史と戦争について記します。

満州事変期

なぜ満洲の主要都市を占領するか

1931年9月以降、柳条湖事件を起した関東軍は、独立国家樹立に向けて次々と満洲の主要都市を占領していった。各都市の占領はどのように理由づけられたか。32年9月、関東軍司令官を務めた本庄繁の、天皇への上奏から簡潔にまとめると、以下のようになる。 (小…

石原莞爾「満蒙問題私見」1931.5

要 旨 一 満蒙ノ価値 政治的 国防上ノ拠点 朝鮮統治支那指導ノ根拠 経済的 刻下ノ急ヲ救フニ足ル 二 満蒙問題ノ解決 解決ノ唯一方策ハ之ヲ領土トナスニアリ 之カ為ニハ其正義ナルコト及之ヲ実行スルノ力アルヲ条件トス 三 解決ノ時期 国内ノ改造ヲ先トスルヨ…

ペルシアの「満洲国」承認問題

■「波斯ノ満洲国承認問題」在ペルシア笠間公使発、昭7.7.1 JACAR ref:B02030417100 ペルシアは阿片輸出の関係から、満洲国承認に色気をみせる。 満洲問題ニ関シテハ当国要路ニ対シ終始啓発ヲ怠ラサル処最近宮中親近者ノ内話ニ依レハ此程宮内大臣ヨリ皇帝ニ対…

「熱河作戦ニ伴フ宣伝計画」

■関東軍参謀部「熱河作戦ニ伴フ宣伝計画」昭8.2.12 JACAR ref:C01002848000 二、熱河経略ノ実力行使ヲ満洲国領域外ニ脱逸セシムルカ如キハ断シテ好マサル処ナリ。 然リト雖モ学良側ニシテ積極的実力行為ニ出スルカ如キ場合ニ於テハ戦果延イテ北支ニ及フモ亦…

陸軍省新聞班「米国国務長官ノ演説及反響」昭7.9.6

8月8日、ニューヨークにおける演説。 ニ.不戦条約ハ其成立ト共ニ人類思想ニ一大革命ヲ起サシメ戦争ヲ以テ不法ナリトナスニ至ラシメタリ而モ其根底ハ戦争防止ノ為ニ何等力ノ手段ヲ執ルニ非サレハ文明ノ前途危シトノ動機ヨリ来レルモノナリ 三.不戦条約ニ対…

海軍中将・中野直枝「重大なる時局と国民の覚悟」昭6末?

■海軍中将・中野直枝「重大なる時局と国民の覚悟」神奈川区青年団連盟編『剛健』第2号、昭6末?帝国在郷軍人会副長である海軍中将・中野直枝は、 昭和6年11月7日、神奈川区青年団連盟後援の時局講演会において、次のように述べている。 今度理事会の鼻息が如…

紙面に掲載される捕虜殺害

『静岡新報』1932年5月1日付には、戦争熱が高揚するなか、 満洲独立守備隊第六大隊第四中隊兵士の次のような知人宛ての便りが紹介されている。 (荒川章二『軍隊と地域』青木書店、2001年) この戦闘で支那兵を五十名ばかり捕虜とし武装解除して全部縛り上げ…

昭7.4.8 宇垣一成日記

■角田順校訂『宇垣一成日記』第2巻(みすず書房、1964) 欧米の論調は、満洲独立は仕方なしと諦めんとするの傾向、漸次濃厚に向ひつつあり。上海事件の発生は(中略)、満洲における仕事を隠蔽し、満洲丈けは日本の自由に任すも仕方なし、との空気の蘊醸には…

昭9.4.3 社説「日支関係の昨今」

■社説「日支関係の昨今」『北海タイムス』昭9.4.3 日支両国の関係は、爾来日を経るに従つて極めて遅々としてではあるが、次第に好転して来てゐるやに思はれる。こ■畢竟、日支両政府当局の平和工作的努力の反映であり、殊に南京政府当局が国際連盟及び米国と…

昭10.5 三坂隆精「天皇機関説に就て」

■本部評議員・三坂隆精「天皇機関説に就て」帝国在郷軍人会札幌支部『良民』229、1935.5 著者は、札幌連隊区から選出された評議員で、 1935年3月14〜16日開催、天皇機関説が議題となった在郷軍人会本部評議会に列席した。 天皇機関説を唱ふる輩は我が国体を…

昭8.2.28 宮嶋清次郎「経済封鎖は予ての覚悟」

■宮嶋清次郎「経済封鎖は予ての覚悟」『北海タイムス』昭8.2.28 著者は、日清紡社長。 経済封鎖によって打撃を被るのは日本だけでなく、 相手国もであるとするのは同日の社説と同じだが、 宮嶋は、日本には対策があるという。 日本としては少しも困らない自…

昭8.2.28 社説「経済封鎖か」

■社説「経済封鎖か」『北海タイムス』昭8.2.28 「日支紛争諮問委員会」では、「東洋方面に於ける武器弾薬輸出に関する小委員会」の設置が提議され、 米ソ両国も招請されようとしていた。 社説子は、経済封鎖は覚悟の上であるとして、 封鎖されて困るのは日本…

昭8.2.26 社説「四十二対一」

■社説「四十二対一」『北海タイムス』昭8.2.26 24日の連盟総会において、日本に対する勧告案が 「四十二対一」の絶対的多数で採択され、連盟との「絶縁」が決まった。 社説子は、未曾有の「国難」にあるとして、「国民の覚悟」を求める。 吾人が予て屡々論じ…

昭8.2.23 社説「連盟は自ら墓穴を掘るか」

■社説「連盟は自ら墓穴を掘るか」『北海タイムス』昭8.2.23 連盟脱退に廟議は一決した。 社説子は、脱退しても何も困ることがないと強気である。 わが国は、連盟を脱退したればとて、何も困ることはなからう。南洋の委任統治は、形式こそ連盟より委任を受け…

昭8.2.22 社説「熱河の討伐」

■社説「熱河の討伐」『北海タイムス』昭8.2.22 連盟脱退の時が迫る一方で、 熱河情勢が紙面を賑わせていた。 熱河は今日、学良の満洲撹■根拠地である。熱河より支那軍を一掃し、長城の線に於て二三の隘路口を押へれば、支那は最早満洲に対して、一指だも加へ…

昭8.2.19 社説「断乎脱退せよ」

■社説「断乎脱退せよ」『北海タイムス』昭8.2.19 総会が開かれる21日を目前に、連盟脱退が閣議決定されようとしているなか、 社説子も即時脱退を主張する。 わが国は連盟に対する一切を清算し、断固として脱退を敢行すべき時期が到達したのである。 わが国は…

昭8.2.18 社説「熱河の清掃」

■社説「熱河の清掃」『北海タイムス』昭8.2.18 熱河は「満洲国」の領土であるにもかかわらず、中国側が自国の領土のように「我物顔」を振舞っているとして、 批判する。 そも\/熱河は地理的歴史的に見て、所謂満洲の一部に属し、昨年三月建国の際発せられ…

昭8.2.16 社説「支那の盲動」

■社説「支那の盲動」『北海タイムス』昭8.2.16 熱河戦をきつかけに日本軍を平津の地にまで誘き寄せ、列強をして、実力干渉を行はしめ、第二の世界戦争を誘発して、日本に一泡吹かせやうとの策戦に傾きつゝあるものゝ如くである。身の程を知らぬ支那の如何に…

リットン調査団への国民の期待

戦争の日本近現代史 (講談社現代新書)作者: 加藤陽子出版社/メーカー: 講談社発売日: 2002/03/19メディア: 新書購入: 10人 クリック: 65回この商品を含むブログ (50件) を見る 加藤陽子氏は、国際法にのっとり正しく行動してきた者が 不当の扱いを受けたとす…

昭8.2.15・18 永井柳太郎「満洲出兵の真意」(上)(下)

■永井柳太郎「満洲出兵の真意」(上)(下)『北海タイムス』昭8.2.15・18 民政党を代表し、拓務大臣として入閣していた永井柳太郎は、 次のように満州事変を正当化している。 永井は、第一次大戦の前と後で一番大きな変化は、「アジアの覚醒」であると主張する…

昭8.2.14 社説「支那の内憂外患」

■社説「支那の内憂外患」『北海タイムス』昭8.2.14 介入を正当化するのに都合がいいため、中国を分裂したもの、 国家の体をなしていないとみなす言説が多いが、 この社説では珍しく渋々、国家として認めている。 もし支那が国家でなければ、内憂も、外患もあ…

昭8.2.9 社説「東洋保全主義」

■社説「東洋保全主義」『北海タイムス』昭8.2.9 社説子は、手を変え品を変え、日本の行動を正当化しているわけだが、 今回は、アメリカのモンロー主義に日本をなぞらえる。 当時の合衆国と神聖同盟との関係は、今日の日本と国際連盟のそれと、善く似よつてゐ…

昭8.2.8 社説「最後の勝利」

■社説「最後の勝利」『北海タイムス』昭和8年2月8日 連盟脱退が取り沙汰されているなか、 社説子は、強気である。 もとよりわが国は、好んで連盟と衝突し、支那と争はむとするものではないが、わが正当なる主張は、如何なる威嚇、全世界が一束となつて来ても…

昭8.2.3 社説「満洲事変と米国の容喙」

■社説「満洲事変と米国の容喙」『北海タイムス』昭和8年2月3日 社説子は、米国のダブルスタンダードを批判する。 朝に国際平和を唱へ、夕に正義人道を説く米国が、最近の対外政策に於ては、非常なる強硬政策を採つてゐることが、窺ひ知られるのである。即ち…

昭8.2.1 社説「日本と連盟」

■社説「日本と連盟」『北海タイムス』昭和8年2月1日 社説子は、国際連盟において「満洲国」を否定する勧告案が採択される見込みが大きいなか、 軍部の即時連盟脱退論に賛同する。 吾人は、此点においては、軍部の主張に共鳴するを禁ずることが出来ない。 で…

予測どおりの日本のアジア政策の破綻

帝国在郷軍人会札幌支部『良民』208(1934.1)に、 「紐育の『フオーリン・アツフエヤズ』誌十月号に、コロンビヤ大学教授ジヨン・イー・オーチヤードの寄稿した『日本のアジア政策は経済的に何を齎したか』と題する論文」が要約して紹介されています(9−10…