1933年ドイツの全権委任法はなぜ成立したか
1933年3月23日、ドイツの国会で可決された全権委任法(政府に立法権を委ねた法律)は、ナチス独裁確立の一つの画期となるものであるが、南利明「NATIONALSOZIALISMUSあるいは「法」なき支配体制-2-」*1を参考にすると、法案が成立したポイントとして次の5つを挙げられる。
- すでに授権法の前例があり、また31、32年には大統領による緊急命令が議会の立法を上回るなか、政府への広範な授権に対して人々の心理的抵抗は強くはなかったこと
- 与党であるナチス党(議席数288)・国家人民党(52)以外の議員が議決に参加しなくても法案の成立が可能となる条件が整えられていたこと
- 共産党議員(81)と一部の社民党議員*2が逮捕されていたこと
- 中央党(74)は、法案に反対してもすでに2月28日の大統領令*3がある限り、ナチスの暴力支配を止めることは不可能と考えたこと
- 上院に当たる連邦参議院議員は州政府の指示に拘束される仕組みとなっていたが、すべての州政府はすでにナチス支配下に置かれていたこと
投票総数535、反対94、賛成441で法案は可決した。反対票を投じたのは社民党だけであった。連邦参議院もそれを全会一致で承認した。