先行研究に依拠すること
○田中禎昭「先行研究をどう整理するか」歴史科学協議会編『卒業論文を書く』山川出版社、1997
「歴史の勉強」は、問題意識(「なぜ、どうして」の問い)を持ち、文献(先学の研究成果)を読み学ぶことを通じてその解決を図ろうとする営みである。一方、「歴史の研究」とは、自分自身が史料を科学的手順、方法に基づき分析、総合し、問題意識の解決を図ろうとする営みであるといえる。自分が抱いた問題意識は先行研究の勉強だけで解決される場合がある。しかし、先行研究を勉強しても、納得できなかったり、以前抱いた疑問は解決しても、また改めて異なる疑問を抱くことがしばしばある。問題が、すでに発表されている文献によってどのように解決されているか、あるいはいないかを認識し、その成果の上で自分自身が史料を検討してその解決を試みようとするとき、そこに、研究の入口が存在する。
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ある問題について述べようとする場合、
大概のことについては先学の研究があるはずですから、
先行研究の調査をまずしなくてはなりません。
自分の意見を発信することが容易になっていますが、
先行研究を調べもせず、好き勝手に述べることほど格好悪いことはないのではないしょうか。
また研究を手当たりしだいつまみ食いしたり、
自分が心地よいものだけをパッチワークのように集める姿勢は、
先行研究を十分に消化した上でさらに考察を進めることとは、まったく違うでしょう。
われわれは、すべての問題を「研究」することは不可能ですから、
先行研究を「勉強」して、問題を把握しておくのは自然のことと思います。
このような先行研究に依拠して議論すること、
ひどい場合には、何らかのものに依拠するということ自体を理解できないひとに
出会うことがあります。