日本近現代史と戦争を研究する

歴史学の観点から日本近現代史と戦争について記します。

研究

史料としての日記について

日記の書き手は、まことにわがままに書く。その結果はいちじるしく反=日本語的な文章になる。日記の文章の、この文章規範を無視した日本語の面白さこそ、じつはいちばん読んでいただきたいところなのである。 (10頁) ヨーロッパの日記を研究して大部の本…

戦争の定義

国際政治学者の奥村房夫*1は、代表的な戦史家の戦争の定義に関して、以下のものを挙げている。 (奥村房夫『「戦争」の論理』学陽書房、1986、16-17頁) (1) クラウゼヴィッツ(『戦争について』) 「戦争とは一種の強力行為であり、その旨とするところは相…

「日中戦争」という呼称

多くの研究者は、当時呼ばれていた「支那事変」ではなく、「日中戦争」と呼称する*1。「支那」に替わり「中国」という呼び名が一般的になったことが一つの原因であるが、では「事変」ではなく「戦争」と呼ぶのはなぜだろうか。 1960年代の代表的な研究である…

Google Newsで新聞検索

http://news.google.com/archivesearch New York Times など戦前の記事も検索可能。 ただし、記事全文をみるには、無料の記事もあるが、 数ドルが必要となるものも多い。1922年ぐらいまでのNew York Times は無料のようだ。

コーパスと論文のオリジナリティー

勝つための論文の書き方 (文春新書)作者: 鹿島茂出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2003/01メディア: 新書購入: 8人 クリック: 269回この商品を含むブログ (53件) を見る 自分がテーマとするジャンルで、すでに壮大な理論を打ち立てた先駆者がいる場合、その…

一橋大学機関リポジトリ

http://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/rs/ 一橋論叢など雑誌論掲載論文や学位論文などがオンラインで閲覧できる。 南京事件関係では、吉田裕氏の論文が読める。 吉田裕「一五年戦争史研究と戦争責任問題 : 南京事件を中心に」『一橋論叢』97(2)、1987.2http://h…

協調会史料

労使協調を目的として1919年に設立された協調会の関係史料が、 オンライン公開されている。http://oohara.mt.tama.hosei.ac.jp/kyochokai/index.html 大正から昭和初期にかけての労働団体・労働争議・無産政党の動向がつかめる。 協調会の調査は、内務省社会…

「史料公開ニュース」

防衛研究所図書館で既に公開されている史料の紹介や新たに公開された史料の目録が、 月一回のペースでUPされています。 http://www.nids.go.jp/military_history/military_archives/news/index.html ちなみに第94回(08年6月)は、日本軍政下マラヤの日本語…

それを通じて何を明らかにしたいのか

ふたたび、田中禎昭「先行研究をどう整理するか」より。 研究が専門化すればするほど、研究対象は多様に個別分散化するのは必然的なことだが、大切なことは、自分がなぜ、論題に掲げたような個別的限定的な素材・対象を研究するのか、本当は、それを通じて何…

問題意識を持つことの大切さ

引き続き、 田中禎昭「先行研究をどう整理するか」より。 歴史の勉強・研究の出発点は、問題意識を持つことである。実証的な歴史研究は、史料を読むことから始まるが、しかし、意識的なものであれ無意識的なものであれ、史料を読む側に問題意識がなければ、…

先行研究に依拠すること

○田中禎昭「先行研究をどう整理するか」歴史科学協議会編『卒業論文を書く』山川出版社、1997 「歴史の勉強」は、問題意識(「なぜ、どうして」の問い)を持ち、文献(先学の研究成果)を読み学ぶことを通じてその解決を図ろうとする営みである。一方、「歴…

通説を調べる

すべて常識的なことがらですが、 「これこれ云々が通説的理解である」とされている記述をもとに、その典拠になっている研究を確認してみる。 主要な研究を読んで、多くの研究において共通認識となっているところを自ら判断する。 未だ通説的理解の形成足りえ…

法令の調べ方

戦前の法令には、 勅令、法律、条約、閣令、省令、達、告示など いくつかの形式があります。 条文については、 『法令全書』(慶応3年以降)や『官報』(明治16年以降)に掲載されています。 コピーする場合、『官報』のほうがコンパクトで、 分量が少なく済…

アジア歴史資料センターの使い方

1.概要 アジア歴史資料センター(アジ歴)は、国立公文書館、外務省外交史料館、防衛省防衛研究所図書館所蔵の史料をデジタルアーカイブ化して、ウェブ上に公開しています。 つまりオンライン上から、生の史料をデジタル画像でみることができるわけです。 た…

先行研究の探し方

先行研究を探すこと、読むことから研究の第一歩が始まります。 端的に言えば、研究とは先行研究を踏まえ、何か新しいことを付け足すことです。 東郷雄二氏は、次のように言います。 文科系の学問の場合、好むと好まざるとにかかわらず、われわれの行う研究は…

中村隆英・伊藤隆編『近代日本研究入門』東京大学出版会 1977年

シンプルかつ的確な記述で、入門書として最適だと思います。 古本では手に入りづらいのですが、多くの大学で所蔵していますね。 第一部、第二部は、各執筆者の、時代や問題の捉え方、見解を述べたものです。 第三部は、「研究の手引」で、初学者の方は一読を…

歴史学者はイデオロギー的か

歴史学者はイデオロギー的だから、そんな研究は読まなくていいとか、 岩波書店は偏向している*1から、読まなくていいとかいう議論を間々見かけます。 しかし、そんな一言で捨て去ってしまっていいのでしょうか。 歴史叙述は、 事実関係を確認する記述 論を展…

日本史学専攻の学生は南京事件をどう調べるか

南京事件に限らず、どの歴史事項でも基本的に調べ方は同じです。 初学者の方には参考にしていただきたいです。 1.辞典 『角川日本史辞典』は、ふつう持っているはずですから、 これを引けば、簡潔に内容をつかめるでしょう。また『国史大辞典』が研究室や図…