法令の調べ方
戦前の法令には、
勅令、法律、条約、閣令、省令、達、告示など
いくつかの形式があります。
条文については、
『法令全書』(慶応3年以降)や『官報』(明治16年以降)に掲載されています。
コピーする場合、『官報』のほうがコンパクトで、
分量が少なく済みます。
勅令や法律、条約に関しては、オンライン上から
アジア歴史資料センターで条文を簡単にみることができます。
1.法律について調べる方法
狭義の「法律」とは、帝国議会の協賛を経て、
天皇の裁可によって成立するものをいいます。
条文をアジ歴で確認する場合、
「御署名原本 ○○法」という形で検索すれば、OKです。
政府による法律案作成過程については、
国立公文書館所蔵の『公文類聚』(アジ歴で閲覧可)をみます。
法律案の審議については、帝国議会の議事録をみます。
議事は、
本会議での法案提出説明・質疑→委員会における審議・採決→本会議での採決
の順となります。
衆議院なら、
『帝国議會衆議院議事速記録』(法案提出説明・質疑)
↓
『帝国議會衆議院委員會議録』 (質疑・採決)
↓
『帝国議會衆議院議事速記録』(委員会報告・採決)
のように、各法律案を追っていく必要があります(貴族院も同様)。
2.勅令について調べる方法
「勅令」とは、天皇の命令として、帝国議会の審議を経ないで
国務大臣の輔弼のみにより制定される立法の形式です。
条文の確認については、法律のときと同様に、
「御署名原本 ○○令」のように検索すればOKです。
勅令には、「緊急勅令」を別として、
(1)法律に対して独立に発する独立命令
(2)法律を執行するための執行命令
(3)法律の委任に基づく委任命令
の3種類があります(百瀬孝『事典昭和戦前期の日本 制度と実態』68頁)。
(1)に関しては、
例えば陸軍関係で言えば、
軍人の俸給などを定める「陸軍給与令」は、法律ではなく、勅令で制定されています。
(2)に関しては、
「法律」によっては、その附則に施行期日を勅令で別に定めるとするものがあります。
また朝鮮、台湾、樺太、関東州など植民地に法律を施行する際に、勅令で定められます。
(3)に関しては、
法律によっては条文中に、この件については勅令で別に定めるとするものがみられるわけです。
例えば、昭和2年法律第47号「兵役法」第3条には、
「志願ニ依リ兵籍ニ編入セラルル者ノ兵役ニ関シテハ勅令ノ定ムル所ニ依ル」
とあります。
そしてそこで言っている勅令が
昭和2年勅令第330号「兵役法施行令」にあたります。
つまり、法律を調べるだけでは終わらず、
勅令まで調べる必要も出てくるわけです。
そしてさらに細かい規程が各省の省令によって
つくられる場合もあります。
先の続きで兵役に関して言えば、
昭和2年陸軍省令第24号「兵役法施行規則」が制定されています。
勅令案作成過程については、法律と同様に、
『公文類聚』をみます。