日本近現代史と戦争を研究する

歴史学の観点から日本近現代史と戦争について記します。

争点のカスケード

ふたたび、荻上チキ『ウェブ炎上』より。

サイバーカスケードといえば、例えばA対Bという意見の対立があったとして、Aの方向に意見が極端に傾いてしまうこと、あるいはAとBの根深い対立が築かれてしまうことが問題とされます。しかしここで重要なのは、そもそもA対Bという問題ばかり排中律(真偽はイエスかノーだけ、答えはAかBだけ。AでなければBであり、BでなければAである、その中間は存在しないという状態)的にフレームアップされることで、A対CあるいはC対Dというような、他の議論の可能性そのものが抹消されていくことです。
(132-133頁)


インターネットだけでなく、
わかりやすさが重視されるTVにおいても
争点のカスケードの方向に作用するでしょう。

マスメディアからの一方向的な情報でさえ、人は選択的に享受するし、もともと持っていた傾向を大きく変更させるようなことは稀だというわけです。

しかし、問いに対する回答自体を変更せずとも、何が問いとして提示されているかという認知のレベルにおいて、メディア上のコミュニケーションは影響力を発揮します。そして重要なのは、問いのフレームは、ある種の回答を誘導してしまうことがあるということです。
(134-135頁)


AかBかと言われてしまえば、Aと答えざるを得ないような問題があるとすれば、
もうそのAかBかという単純な問いだけに議論が覆いつくされ、
丁寧な議論をする余地がなくなってしまう。