近代的権力とホロコースト
著者は、「強制収容所は野蛮の延長にある暴力ではなく、むしろ規律化された近代的権力の極致であった」と端的に述べる。
ある程度仕方のないこととはいえ、もっぱら「非合理的な」反ユダヤ主義によってホロコーストは説明されてきた。だが、ハリウッド映画『シンドラーのリスト』の美談においてさえ、ユダヤ人絶滅政策が戦争体制維持の合理的な強制労働システムと不可分であったことが示されている。多くの強制収容所が同時に軍事工場を併設していた事実や、奴隷労働により死亡した膨大な数に上るソ連人やポーランド人の存在からは、現代社会と連続する別の側面が見える。占領地からの戦争捕虜を含む大量の外国人労働者の導入によって、戦時下にドイツ人労働者の地位は相対的に向上しホワイトカラー化が進んだ。その結果として、「きつい、汚い、危険」な三K労働を外国人労働者に依存する現在の福祉国家ドイツの社会経済システムが基礎付けられた。
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近代化・国民化の帰結として捉える。