日本近現代史と戦争を研究する

歴史学の観点から日本近現代史と戦争について記します。

両院協議会で妥協案成立

両院協議会で妥協案が成立した。同案は上院および下院において承認され、大統領の裁可によって法律となった。常備兵数は平時17万、義勇兵条項は削除、硝石製造所設立、連邦所管州兵約42万新設である。


「上院ニ於テ修正セラレタル『ヘー』氏陸軍拡張法案送付ノ件」珍田大使より石井外相宛、1916.5.12 JACAR:B03050819400 15/23

  • 「『ヘー』氏陸軍拡張法案ハ多少ノ修正ヲ経タル後三月廿三日下院ヲ通過シタル所上院ニ於テハ之二対シ『チエンバレーン」案ヲ加味シタル多大ノ修正ヲ施シタル後四月十七日之ヲ可決致候処下院ニ於テハ此上院ノ修正ニ同意セス結局両院協議会ノ議ニ附セラレタルモ両院各自説ヲ固守シ今尚協議纏マラサルノ状況ニ有之候」


New York Times - May 13, 1916 ARMY BILL AGREEMENT IS EXPECTED TODAY

  • 上院および下院協議委員は合意間近である。二点を除いてすべて調整できたと考えられる。12日午後、合意を具現化する法案の印刷が指示され、翌日、完全な合意がなされることが望まれている。
  • 常備軍に関して上院案が採用されたようで、これは国防力を向上させる大きな一歩となるとみられる。義勇兵部隊に関しては、州兵の地位を弱めかねないものを良しとしない下院の反対に直面し、削除されるであろう。下院の州兵連邦所管化については、承認されるであろう。州兵は40万まで増大され、参謀部に代表者を送ることとなる。
  • 17万5000が有効な最小限の戦力となり、上院案の下で大統領が平時でもこの戦力を約21万8000まで増加を命令し得ることはほぼ確実である。おそらく念入りにプラッツバーグ試験のような全国レベルに拡大する条項が盛り込まれよう。
  • 上院案の硝石製造所設立条項に対する下院の修正が承認されている。
  • チェンバレン議員は、明日、合意がなるだろうと述べた。


New York Times - May 17, 1916 211000 REGULARS IN NEW PEACE ARMY

  • チェンバレン議員は、義勇兵に関する上院案の規程を保持できない無力さを強調した。来たる数年間、州兵はその支持者の予測と合うかどうか試されることとなる。州兵がその価値を証明しない限り、義勇兵大陸軍計画のような案が多大な期待をもって盛り返すのは明白である。
  • ヘイ議員は、チェンバレンが大規模陸軍主張者が勝利を主張できるよう、認められた以上に国防力の拡張を示そうとしていると述べた。チェンバレン議員は、ヘイが小規模陸軍主張者に同じ事をしようとしていると述べた。
  • 両院協議会が44万人プラス将校と規定しているとのチェンバレンの主張は誤りである。実際には、42万8000プラス将校である。最大数に達するにしても五年後であることを銘記しなければならない。もしヨーロッパの戦争が終了し、この国の状況が平常に戻ったら、議会は五年を経る前にその規定を廃止し、現状の兵力に戻すことができる、とヘイは述べる。
  • チェンバレン議員の声明によると、常備軍の増加は以下の通り。歩兵34個連隊、騎兵10個連隊、砲兵15個連隊、工兵5個連隊、馬上工兵2個大隊、沿岸砲兵93個中隊、8個飛行中隊。
  • また平時常備軍の上限は、将校約1万1000、兵17万5000、それに加えて信号兵、兵站部隊、衛生部、フィリピン部隊、unassigned recruitsで、総計将校1万1000、兵20万となる。
  • 義勇兵を規定するいわゆる上院案第56条は、協議会案には含まれない。同条に関して下院は激しく反対しており、案に含めないことが決まった。そこには、訓練部隊に関する規程が書き込まれ、下院あるいは上院の提案以上に拡大された規定となった。それは、州兵に加入していない者の訓練も規定している。
  • 州兵に関しては実質、下院案あるいは上院案と変わりはない。州兵は将校約1万7000、兵44万となる。
  • 硝石製造所に関する上院案の規定は、下院によって修正され、法案に書き込まれた。


「第二四三号」珍田大使より石井外相宛、1916.5.22 JACAR:B03050819400  13/23

  • 「往電第六四号ニ関シ其後上院通過ノ修正Chamberlain案(常備軍二十五万)ト下院通過ノHay案(十四万)両院協議会ニ於テ折衷ノ結果常備軍十七万五千ノ協議会報告案成立上院ハ去ル十七日同報告案ヲ決シ下院モ亦二十日二四九対二五ニテ之ヲ決セリ委細郵便」


「米国陸軍拡張法ノ成立」珍田大使より石井外相宛、1916.6.24 JACAR:B03050819800 19/34

  • 「斯クテ両院協議会ヲ開催シテ討議スル所アリシカ両者各々自説ヲ固守シテ互ニ相下ラス遂ニ五月五日同協議会ハ協議纏マラサル旨ノ協議会報告書ヲ両院ニ提出スルニ至リシモ上下両院協議委員ハ五月十日ヨリ再ヒ同協議会ヲ開キ討議互譲ノ結果漸ク両案ノ間ニ妥協ヲ見ルニ至リ両院協議委員案ハ五月十六日協議会ニ於テ決定セシ妥協案ヲ各自本院ニ報告スル所アリタリ」


「米国陸軍拡張法ノ成立」(大5.6.24報告)『外事彙報』第8号、大5.8.15 JACAR:B02130390100

  • 下院を通過したヘイ案は、同院軍事委員会原案と比較すると、二点の修正を経ている。第1に、召募兵は現役一箇年で予備役編入を可としたこと、第2に、硝石製造所設立の削除である。
  • 「四月十八日本案(引用者注―上院チェンバレン案)討議最終日ニ至リ『コネチカット』州選出共和党員『ブランデイジー』(Frank Bosworth Brandegee)ノ提出ニ係ル正規常備軍二十五万トナスノ修正案ヲ四三対三七票ヲ以テ可決」
  • 下院通過案と上院通過案の主要な差異は、第1に常備兵数(下院14万、上院25万)、第2に上院通過案第56条の常備義勇兵制度新設、第3に上院通過案における硝石製造所設立条項である。
  • 両院協議会の下院側協議委員は、ヘイ、デント(民主党アラバマ)、カーン(共和党・カリフォルニア)、上院側協議委員はチェンバレン、ベッカム民主党・ケンタッキー)、ブルーサール(民主党・ルイジアナ)、デュー・ポント(共和党・デラウェア)、ワーレン(共和党・ワイオミング)。
  • 両院協議会における妥協により、第1に、常備兵数を平時17万とすること、第2に、上院案第56条常備義勇兵条項を削除、第3に、硝石製造所設立に関してヘイ原案を復活、第4に、連邦所管州兵約42万を向う5年以内に新設することとなった。
  • 両院協議会案は、上院では5月17日、記名投票に問うことなく承認、下院では、共和党側に常備兵数増加に飽き足らない議員もいたが、20日351対25票で承認。6月3日、大統領が裁可し、法律となった。