日本近現代史と戦争を研究する

歴史学の観点から日本近現代史と戦争について記します。

中華人民共和国兵役法 第五章 青年学生中より招聘の軍隊学校学生

第五章 青年学生中より招聘の軍隊学校学生


第三十一条
軍隊建設の必要により、軍隊学校は青年学生中より学生を招聘することができる。招聘学生の年齢は、徴集服現役年齢の範囲から外れる。


第三十二条
学生で学業を終え試験に合格した者は、学校より卒業証書を発行され、規定に照らして現役軍官、文官幹部あるいは士官に任命する。


第三十三条
学生で規定科目を履修し終え、試験不合格の者は、学校より修了証書を発行され、入学前戸籍所在地へ戻る。就学期間その父母がすでに戸籍移動手続きをした者は、父母の現戸籍所在地へ戻ることができ、県、自治県、市、市轄区の人民政府により国家の関係規定に照らして受け入れられる。


第三十四条
学生で慢性病あるいはその他原因により軍隊学校での学習の継続に適さず、退学の承認を経た者は、学校より在校証書を発給され、入学前戸籍所在地へ戻る。就学期間その父母がすでに戸籍移動手続きをした者は、父母の現戸籍所在地へ戻ることができ、県、自治県、市、市轄区の人民政府により国家の関係規定に照らして受け入れられる。


第三十五条
学生で除籍された者は、入学前戸籍所在地へ戻る。就学期間その父母がすでに戸籍移動手続きをした者は、父母の現戸籍所在地へ戻ることができ、県、自治県、市、市轄区の人民政府により国家の関係規定に照らして取り扱う。


第三十六条
軍隊は国防建設の必要により普通高等学校に招聘を委託し、国防生を選抜育成することができる。国防生は在校学習期間に国防奨学金待遇を享受し、軍事訓練、政治教育に参加し、国防生育成協議規定のその他義務を履行しなければならない。卒業後、軍隊で現役に服するまで育成協議を履行しなければならず、規定に照らして入隊手続きをし、現役軍官あるいは文官幹部に任命される。
国防生で在校学習期間、関係規定に照らして国防生養成に適せず、しかし所属学校普通生育成要求に符号する者は、軍隊関係部門の承認を経て、普通生に変更できる。除籍あるいは退学処分にされた者は、所属学校で国家関係規定に照らして手続きする。


第三十七条
本法第三十二条、第三十三条、第三十四条、第三十五条の規定は、現役下士官より招聘の学生にも適用される。

→第六章 民兵


興味深いのは、第三十六条にみられる国防生である。幹部候補となる高等教育を受けた人材の確保、軍による学生の青田買いの規定である。戦時日本にも同様な制度があった。いわゆる学徒動員期、軍が理系の専門知識を要する人材を確保しようと学生の在学中に採用を決める制度があった。一方、中国の国防生はさらに早く、大学入学段階から国防生として入学する。大学入学試験の点数面でも優遇措置があるようである。

中華人民共和国兵役法 第四章 軍官の現役および予備役

第四章 軍官の現役および予備役


第二十六条
現役軍官は以下の人員より補充する。
(一)優秀下士官兵からの選抜および普通高中卒業生で軍隊学校卒業の者
(二)普通高等学校卒業の国防生からの選抜およびその他当期優秀卒業生
(三)普通高等学校本科以上の学歴を有する優秀な下士官兵の直接昇格
(四)現役軍官文官幹部からの転任
(五)軍隊以外の専門技術人員およびその他人員の招聘
戦時は必要により、下士官兵、徴召予備役軍官および非軍事部門の人員の中から直接軍官に任命する。


第二十七条
予備役軍官は以下の人員を包括する。
(一)現役を終え予備役転入となった軍官
(二)予備役軍官に服することが確定された現役退出下士官
(三)予備役軍官に服することが確定された普通高等学校卒業生
(四)予備役軍官に服することが確定された専任人民武装幹部および民兵幹部
(五)予備役軍官に服することが確定された非軍事部門幹部および専門技術人員


第二十八条
軍官の現役および予備役に服する最高年齢は「中華人民共和国現役軍官法」および「中華人民共和国予備役軍官法」の規定による。


第二十九条
現役軍官は規定に照らし最高年齢まで服せば、現役を退出する。最高年齢未満で特殊的状況の必要により現役を退出する者は、審査を経て現役を退出できる。


第三十条
現役を退出し予備役編入となった軍官、現役を退出し予備役軍官に服することが確定された下士官兵は、住所地到着後三十日以内に、当地の県、自治県、市、市轄区の兵役機関で予備役軍官登記手続きをする。
予備役軍官職務担当に選抜の専任人民武装幹部、民兵幹部、普通高等学校卒業生、非軍事部門人員は、職務単位あるいは戸籍所在地の県、自治県、市、市轄区の兵役機関により上級軍事機関の承認を求め、登記手続きし、予備役軍官に服する。
予備役軍官は規定に照らし、最高年齢まで予備役に服すれば、予備役を退出する。


→第五章 青年学生中より招聘の軍隊学校学生

中華人民共和国兵役法 第三章 下士官兵の現役および予備役

第三章 下士官兵の現役および予備役


第十八条 現役下士官兵は義務兵役制下士官兵および志願兵制下士官兵を包括し、義務兵制下士官兵を義務兵、志願兵制下士官兵を士官と称す。


第十九条
義務兵が現役に服する期間を二年とする。


第二十条
義務兵は現役満期となれば、軍隊の要求および本人の志願により、団以上の承認を経て、士官となることができる。軍隊の要求により、非軍事部門から専門技能を有する公民を
直接、士官に招聘することができる。
士官は等級に分れ現役に服する。士官の現役に服する期間は、一般的に三十年を超えず、年齢は五十五歳を超えない。
士官が等級に分れ現役に服する方法および直接、非軍事部門から士官に招聘する方法は、国務院、中央軍事委員会の規定による。


第二十一条
下士官兵は現役満期となれば、現役を終えなければならない。軍隊編制員額の縮減要求により現役を終える者、軍隊医院の診断で本人の健康状態が現役継続に適合しない者あるいはその他特殊的な原因や要求により現役を終える者は、師以上の機関の承認を経て、現役を繰り上げて終えることができる。
下士官兵が現役を終える時期は、部隊が現役退出日と宣言した日とする。


第二十二条
下士官兵が現役を終える際、予備役の条件に符号する者は部隊の確定により、下士官兵は予備役に服する。審査を経て、軍官職務担任に適合する者は、軍官予備役に服する。
現役を終える下士官兵で、部隊の確定により予備役に服する者は、現役退出の日より四十日以内に、住所地の県、自治県、市、市轄区の兵役機関で予備役登記手続きをする。


第二十三条
本法第十三条の規定に照らし、兵役登記を経た応徴公民で、まだ徴集されず現役に服していない者は、下士官兵予備役として扱い登記する。


第二十四条
下士官兵予備役の年齢は、十八歳より三十五歳までとし、必要により適宜延長できる。具体的な処置は国務院、中央軍事委員会の規定による。


第二十五条
下士官兵予備役を第一類および第二類に分ける。
第一類下士官兵予備役は以下の人員を包括する。
(一)現役部隊予備の予備役下士官
(二)予備役部隊編入の予備役下士官
(三)予備役登記を経て基幹民兵組織に編入の人員
第二類下士官兵予備役は以下の人員を包括する。
(一)予備役登記を経て普通民兵組織に編入の人員
(二)その他予備役登記を経て下士官兵予備役含む確定の人員
予備役下士官兵で予備役最高年齢に達した者は、予備役を終える。


→第四章 軍官の現役および予備役

中華人民共和国兵役法 第二章 平時徴集

第二章 平時徴集


第十一条
全国で毎年徴集し現役に服する人数、要求、時期は、国務院および中央軍事委員会の命令規定による。
県以上の地方各級人民政府は、兵役機関および関係機関を組織し、徴集業務機構を構成し、徴集業務の組織実施の責任を負う。


第十二条
毎年十二月三十一日以前に年齢満十八歳となる男子公民は、徴集され現役に服さなければならない。当年に徴集されない者は、二十二歳まで徴集服役が可能である。普通高等学校卒業生の徴集年齢は、二十四歳まで延長し得る。
軍隊の要求により、前項規定に照らし、女子公民を徴集し現役に服させることができる。
軍隊の要求および本人の志願により、当年十二月三十一日以前に年齢満十七歳となり、十八歳未満の公民を徴集し現役に服させることができる。


第十三条
国家は兵役登記制度を実施する。毎年十二月三十一日以前に年齢満十八歳となる男子公民は、すべて当年六月三十日以前に、県、自治県、市、市轄区の兵役機関の段取りに照らして、兵役登記を行わなければならない。兵役登記を経、第一審査合格の者を応徴公民と称す。


第十四条
徴集期間に応徴公民は県、自治県、市、市轄区の兵役機関の通知に照らして、指定の体格検査場に到り体格検査を受けなければならない。
応徴公民で服現役条件に符合し、県、自治県、市、市轄区の兵役機関が同意する者は、徴集され現役に服する。


第十五条
徴集期間に応徴公民は徴集され現役に服する。機関、団体、企業事業単位に募集され雇用あるいは招聘された者は、兵役義務を優先して履行すべきである。関係がある機関、団体、企業事業単位は国防および軍隊建設の要求に従い、兵員徴集業務を支持しなければならない。


第十六条
応徴公民が家庭生活を維持する唯一の労働力である場合、徴集を猶予することができる。


第十七条
応徴公民が現在、法による捜査、起訴、裁判中の者あるいは徒刑、懲役、拘置に処され現在服役中の者は、徴集しない。

→第三章 下士官兵の現役および予備役


注目は第十二条である。原則的に満十八歳男子は徴集されることになっている。しかし実際は、例えば中国の男子大学生がこぞって兵役に就くということはない。それは法の運用により、志願兵枠をもって兵員需要を満たしているからであろう。しかし高等教育を受けた者の徴兵は、一般の22歳に対し24歳まで可能となっており、当局が高等教育を受けた者を兵員源として重んじていることがわかる。また女子も徴集可能であるとする規定もみられる。


日経ビジネスオンラインの記事(2009.11.18)によると、就職難の中、大卒生が入隊の門を叩き始めたとしている。当局も大卒生の入隊に優遇策を講じているという。また女子大生が両親に付き添われて応募相談に来ている姿も報じられている。

中華人民共和国兵役法 第一章

中国の現行兵役法は、1984年に施行されたものである。1998年、2009年、2011年と3回の修正を経ている。全12章74条からなる。


今回は、第一章。

中華人民共和国兵役法


第一章 総則


第一条
中華人民共和国憲法第五十五条「祖国を防衛し、侵略に抵抗することは中華人民共和国各公民の神聖なる責務である。法律に従って兵役に服し、民兵組織に参加することは、中華人民共和国公民の光栄ある義務である」およびその他関係ある条款の規定を根拠とし、本法を制定する。


第二条
中華人民共和国は義務兵と志願兵の結合、民兵と予備役の結合した兵役制度を実施する。


第三条
中華人民共和国公民は、民族、種族、職業、出身家庭、宗教信仰および教育程度を区別せず、すべて本法の規定に照らし兵役に服する義務を有する。
深刻な生理的欠陥あるいは重大な障害を有し、服役に適さない者は、兵役を免除する。
法律により政治的権利を剥奪された者は、兵役に服することを得ず。


第四条
中華人民共和国の武力は、中国人民解放軍中国人民武装警察部隊および民兵組織よりなる。


第五条
兵役は現役と予備役に分かれる。中国人民解放軍の現役に服する者を現役軍人と称する。登録を経て現役準備段階の者、予備役部隊編入の者、民兵組織編入で予備役に服する者あるいはその他の形式で予備役に服する者を予備役人員と称する。


第六条
現役軍人および予備役人員は、憲法および法律を遵守し、公民の義務を履行しなければならないと同時に公民の権利を有する。兵役に服することにより生ずる権利および義務は、本法およびその他関係の法律法規の規定による。


第七条
現役軍人は軍隊の条令および条例を遵守し、職務に忠実であり、いつでも祖国を防衛するため戦わなければならない。
予備役人員は規定に照らして軍事訓練に参加し、軍事勤務を実施し、いつでも参軍参戦の準備をし、祖国を防衛しなければならない。


第八条
現役軍人および予備役人員で勲功を立てた者は、勲章、メダルあるいは栄誉称号を授与しを得る。


第九条
中国人民解放軍は軍人等級制度を実施する。


第十条
全国兵役業務は、国務院、中央軍事委員会の指導の下、国防部が責任を負う。
各軍区は国防部が与えた任務に応じて責任を負い、当該区域兵役業務を取り扱う。
省軍区(衛戍区、警備区)、軍分区(警備区)および県、自治県、市、市轄区の人民武装部は当該区域の兵役機関を兼ね、上級軍事機関および同級人民政府の指導の下、当該区域兵役業務取扱の責任を負う。
機関、団体、企業事業単位および郷、民族郷、鎮の人民政府は、本法の規定に照らし、兵役業務任務を全うする。兵役業務は、設けてある人民武装部機関で、人民武装部が取り扱う。人民武装部機関がない場合、確たる一部門が取り扱う。


→第二章 平時徴集

なぜ満洲の主要都市を占領するか

1931年9月以降、柳条湖事件を起した関東軍は、独立国家樹立に向けて次々と満洲の主要都市を占領していった。各都市の占領はどのように理由づけられたか。32年9月、関東軍司令官を務めた本庄繁の、天皇への上奏から簡潔にまとめると、以下のようになる。
(小林龍夫・島田俊彦・稲葉正夫編『現代史資料 11 続・満州事変みすず書房、1965年、851-852頁)


奉天長春・営口・鳳凰城】1931.9
満鉄を保護し、沿線在留帝国臣民を保護するため

吉林】同上
満鉄右側面の脅威を除去するため

チチハル】 1931.11
鉄道橋が破壊されたので修復しようとしたら黒竜江省軍から不法な攻撃を受けたので、攻勢に転じた

【錦州】1932.1
旧東北政権が根拠を構え南満一帯の擾乱を策すため

【ハルピン】1932.2
吉林軍が情勢安定のため行動しているのに、反吉林軍がそれを阻み、ハルピン在留帝国臣民が危険となったため


危機にある居留民保護が理由とされるが、居留民を引揚げさせるという方法もあった。実際、当初事態拡大に消極的だった陸軍中央は、ハルピンに派兵するよりは居留民の引揚げを望んだ。結局、9月のハルピン派兵は見送りになったが、以下の史料は、消極的な陸軍中央に対して、関東軍の強硬さがよく表われている。


関東軍参謀部総務課・片倉衷「満洲事変機密政略日誌」9月24日条

然るに午後に至り参謀総長より五七電を以て哈市に対しては事態急変するも出発せず、次で陸軍大臣より陸満一七を以て哈市居留民の現地保護は之を行はず要すれば在留民を引揚げ派兵せざる旨去二十二日総理より上奏せる旨来電あり、更に大臣より陸満二〇電を以て間島の情況仮令悪化せる場合に於ても事態拡大防止の為には軍隊の力に拠ることなく警察官をして之に応ずることに決定しある旨の電報に接す。
 噫 政府の真意那辺に在るや、陸軍大臣は何故政府と正面衝突を敢行するの決意を以て当らざるや、今や「断」の一字の外時局を収拾する何者をも存せず、幕僚間或は憤慨し或は嘆息し軍司令官又沈痛の体なり。

(小林龍夫・島田俊彦編『現代史資料 7 満州事変みすず書房、1964年、191頁)

「満人」軍警による対日人暴行事件

「満人」は、ただ虐げられるばかりの存在ではなかった。「満人」軍警による対日人暴行事件が発生している。以下は、その一例である。「満人」軍警は武力を有しているから、ふつうの「満人」とは違い、一般の日本人に不平不満をぶつける力があり、気持ちでも負けないところがあった。

事件は、1943年1月10日に起った。被害者は、熱河蛍石株式会社自転車運転手の伊勢間松五郎、加害者は、熱河省隆化県馬虎営馬虎警察分駐所の許警士ほか6名である(以下は、吉林省檔案館, 廣西師範大學出版社編『日本関東憲兵隊報告集(第一輯)』7、廣西師範大學出版社、2005年、239-240頁による)。

被害者カ木炭ヲ自動車ニテ運搬シ来リタルヲ目撃セル加害者許警士ハ之カ一部ヲ無断ニテ持去ラントシタルヲ以テ伊勢間カ之ヲ制止セルモ肯セサルタメ立腹ノ余リ許警士ノ顔面二拳ノ一撃ヲ加ヘタリ

運搬していた木炭を許警士が勝手に持っていこうとしたので、伊勢間が許警士を殴った。伊勢間が警官相手に殴れるのも、相手が「満人」だからであろう。ともかく許警士が木炭を盗もうとしたことが事件の発端となった。

而シテ其場ハ何等問題ノ拡大スルコトナク解決セルモ右伊勢間ノ許警士殴打ヲ聞知セル同分駐所張警長ノ妻カ「警察官タルモノカ例ヘ相手カ日本人テアツテモ殴打セラレテ黙ツテ居テハ面子没有ナリ」云々ト洩シ許警士ヲ仄カシタルヲ以テ

そのまま解決すると思われた事件は、張警長の妻の登場で状況が変わる。彼女は「警官の面子まる潰れだ」と言った。ねちねち言ったのか、さらっと言ったのか。許警士は、警長の妻に格好いいところをみせようとしたのか、あるいはその言葉に憤慨したか。

許警士ハ直ニ事務所ニ伊勢間ヲ訪レタル処伊勢間ハ許警士ニ対シ「オ前ハ悪イコトヲシタノテアルカラ警務科ニ送致スル」云々ト洩シタルニ因リ両者間ニ論争ヲ生シタリ
然ルニ之ヲ窓外ヨリ目撃シアリタル加害者警士王横譯外四名ハ事務所ニ乱入シ事務所ニ居合セタル日系事務員二名ヲ室外ニ押出シ伊勢間ニ対シ応援ヲ不能ナラシメルト共ニ「打死没関係」ヲ叫ヒ棍棒ヲ以テ伊勢間ノ頭部及腰部ヲ殴打セルモ伊勢間ノ抵抗ナキト前記張警長ノ妻等ノ仲裁ニ依リ鎮静セリ

許警士は、仲間を連れて伊勢間の事務所に乗り込み、伊勢間を棍棒で殴打する。仲裁に入った警長の妻のほくそ笑む顔が、目に浮かびそうだ。