日本近現代史と戦争を研究する

歴史学の観点から日本近現代史と戦争について記します。

問題意識を持つことの大切さ

引き続き、
田中禎昭「先行研究をどう整理するか」より。

歴史の勉強・研究の出発点は、問題意識を持つことである。実証的な歴史研究は、史料を読むことから始まるが、しかし、意識的なものであれ無意識的なものであれ、史料を読む側に問題意識がなければ、史料が読む者の心に訴えかけてくることは決してない。つまり、潜在的な意識であったとしても、「何を明らかにし何を読みとりたいのか」という気持ち(問題意識)があるからこそ、人は史料を読んでそれを重要だと感じ、研究の素材として選択することができるのである。


この問題意識自体は、1.個人の教育や読書・勉強の私的経験から蓄積された歴史的知識と、2.現代に生きる個人のそれまでの社会的経験(実際に体験したことだけでなく見聞きし、学んだ経験をも含む)を総動員した知識総体によって規定され、3.現代という時代を個人が歴史的にどう見つめようとしているか、という現代に対する個人の生きる姿勢によって育まれるものである。したがって、1.2.の総体としての経験・知識が浅く3.の視角の甘い段階での問題意識は、それに応じて抽象的で浅薄なレベルのものにならざるをえない。
(22頁)

(※読みやすいように改行、機種依存文字は改めた)


問題意識が先か史料が先かとはよく言われますが、
近代史の場合、史料が豊富なので、史料先行でも論文は書けてしまいます。


しかしそれでは、のちのち行き詰ってしまう。
研究のための研究になってしまうのですね。


読みものにおいては、その作者がどういうバックグラウンドで
どういう関心から書いたのかというのが、読者を惹きつけると思いますが、
論文も同様なのですね。


強烈な問題意識にわれわれは惹きつけられる。