日本近現代史と戦争を研究する

歴史学の観点から日本近現代史と戦争について記します。

台湾植民地戦争とは何か

荒川章二氏は、1995年の時点で次のように述べていた。 今からちょうど一〇〇年前、一八九五(明治二八)年四月十七日の下関講和条約調印で、日清戦争は公式に終結した。そして現代の我々日本人は、それをもって、以後日露戦争まで、日本軍の対外的武力行使が…

「日台戦争」と呼ぶのは誤りか

檜山幸夫氏は日清戦争および植民地期台湾を専門としているが、 その著書『日清戦争 秘蔵写真が明かす真実』(講談社、1997)では、 第六章「台湾統治と台湾戦線」の第三節を「日台戦争」と題している。 同節251頁では、次のように述べる。 清軍兵士と異なり…

日露戦争

<日露戦争> 著者・編者 タイトル 所収・出版社 発行 日本国際政治学会 日清・日露戦争 国際政治19 1962.4 橋川文三 日清・日露の戦役 筑摩書房 1970 信夫清三郎・中山治一 日露戦争史の研究 河出書房新社 1972 大山梓 日露戦争の軍政史録 芙蓉書房 1973 大…

日清戦争

<日清戦争> 著者・編者 タイトル 所収・出版社 発行 日本国際政治学会 日清・日露戦争 国際政治19 1962.4 中塚明 日清戦争の研究 青木書店 1968 橋川文三 日清・日露の戦役 筑摩書房 1970 藤村道生 日清戦争 : 東アジア近代史の転換点 岩波新書・青版880 1…

徴兵制導入

<徴兵制導入> 著者・編者 タイトル 所収・出版社 発行 鹿野政直 日本軍隊の成立 歴史評論 46 1953.6 藤原彰 日本軍国主義の戦略思想 思想 365 1954.11 大石愼三郎 徴兵制と家 歴史学研究 194 1956.4 北崎豊二 明治一六年の徴兵令改正と民衆の動向 ヒストリ…

幕末〜明治初期

<幕末〜明治初期> 著者・編者 タイトル 所収・出版社 発行 篠原宏 陸軍創設史 リブロポート 1983 熊沢徹 幕末の軍制改革と兵賦徴発 歴史評論 499 1991.11 熊沢徹 幕末維新期の軍事と徴兵 歴史学研究 651 1993.10 山田千秋 日本軍制の起源とドイツ 原書房 1…

軍隊の国民的基盤

<軍隊の国民的基盤> 著者・編者 タイトル 所収・出版社 発行 飯塚浩二 日本の軍隊 東大協同組合出版部 1950 吉田裕 日本の軍隊 岩波講座 日本歴史17 1994 加藤陽子 徴兵制と近代日本 吉川弘文館 1996 原田敬一 国民軍の神話 吉川弘文館 2001 荒川章二 軍隊…

天皇の軍隊

<天皇の軍隊> 著者・編者 タイトル 所収・出版社 発行 藤原彰 国民の軍隊か、天皇の軍隊か 近代日本の争点・中 1967 大谷敬二郎 天皇の軍隊 図書出版社 1972 大谷敬二郎 皇軍の崩壊 図書出版社 1975 井上清 新版日本の軍国主義I〜IV 現代評論社 1975〜77 …

近代日本軍事史関係文献

天皇の軍隊 軍隊の国民的基盤 男性史 社会学 植民地台湾 幕末〜明治初期 戊辰戦争 徴兵制導入 西南戦争 日清戦争 義和団事変 日露戦争 第一次大戦 シベリア戦争 〈未完〉※追記 09/4/28 各項目ごとにエントリを分けました。

白リンの野外被曝濃度

探していた、白リンの野外被曝濃度に言及したBerkowitzほかの研究を、 http://www.ntis.gov/ で入手した。 タイトルは、OCCUPATIONAL AND ENVIRONMENTAL HAZARDS ASSOCIATED WITH THE FORMULATION AND USE OF WHITE PHOSPHORUS-FELT AND RED PHOSPHORUS-BUTY…

タイトル変更

心機一転、タイトルを変更しました。 長らく放置していたブログのタイトルを引き継ぐかたちとなります。 よろしくお願いします。

EPA報告書:野外での暴露

さきにみたように、NRC報告書は、野外における黄燐煙の濃度に関して、 米国環境保護庁 (EPA)のデータを紹介していた。 今回は、そのEPAの資料にあたってみた。 タイトルは、 Summary Review of Health Effects Associated with Elemental and Inorganic P…

日本における黄燐の安全基準

前エントリでは、アメリカにおける黄燐の安全基準について、触れたが、 では、日本ではその基準はどうなっているのであろうか。 安全衛生情報センター(厚労省の委託により中央労働災害防止協会が運営)は、 GHS(「化学品の分類および表示に関する世界調和…

黄燐の吸入毒性に関するNRC報告書

「黄燐に限らずどんな煙も吸いすぎたら危険に決まっているのだから、黄燐だけを問題にするのはおかしい」というのは、いささか乱暴な議論であろう。物質の性質の違いによって、人体に与える影響も当然違ってくるのではないだろうか。そこで黄燐による影響は…

黄燐にはどのような毒性があるか

黄燐の毒性は、古くから知られており、 黄燐による害について記した文献は、枚挙に暇がない。 その害は、以下の六つに分類できる。 摂取による害 酷い火傷 火傷に止まらない毒性 短期間の吸入による害 長期間の吸入による害 環境への害 以下では、戦前日本の…

どの目標に対して榴弾と黄燐を組み合わせるか

タコつぼに隠れている兵士に対して、榴弾と黄燐を用いる “シェイクアンドベイク”作戦については、すでにみたところである。 しかし、榴弾と黄燐が用いられるのは、、タコつぼの兵士に対してだけでなかった。 米陸軍野外教範 FM 23-91 MORTAR GUNNERY(1991)…

米軍の戦時国際法上における黄燐認識

米陸軍法務官が、Field Artillery誌上に 戦時国際法および火器支援の入門向け解説を書いている。 Captain Jon D. Holdaway The Law of War and Fire Support:A Primer for Fire Supporters Field Artillery May-June 2001 http://sill-www.army.mil/famag/20…

朝鮮戦争と黄燐

以下は、米陸軍重迫撃砲隊の前進観測員として朝鮮戦争に従軍したRonald Eugene Rosserのインタビュー(2004.7.29)である。http://www.koreanwar-educator.org/memoirs/rosser_ronald/index.htm 迫撃砲は、支援火器に位置づけられる。 支援火器とは、歩兵部…

Phosphorous Smoke

米陸軍の野外教範(Field Manual) Smoke Operations (1990)は、 Phosphorous Smoke 燐煙について次のように述べている(拙訳を付した)。http://www.globalsecurity.org/military/library/policy/army/fm/3-50/toc.htm http://www.globalsecurity.org/mil…

南京事件の被害についてどのような史料に基づいて認定するか

歴史の事実をどう認定しどう教えるか―検証 731部隊・南京虐殺事件・「従軍慰安婦」作者: 笠原十九司,吉見義明,渡辺春己,松村高夫,高嶋伸欣出版社/メーカー: 教育史料出版会発売日: 1997/10メディア: ペーパーバック クリック: 19回この商品を含むブログ (2件…

外交会議第三会期(1976.4.21〜6.11)

以下は、外交会議第三会期の審議状況をまとめた国連事務総長報告書(1977)(竹本正幸・楠美智子「人道的理由で使用の禁止又は制限の対象となる焼夷兵器その他の特定通常兵器(一)」『関西大学法学論集』28-2、1978.6)による。 焼夷兵器に関する議論では、…

ルガノ会議(1976.1.28〜2.26)

以下は、1976.1.28〜2.26開催のルガノにおける第二回特定兵器専門家会議の審議状況をまとめた国連事務総長報告書(1977)(竹本正幸・楠美智子「人道的理由で使用の禁止又は制限の対象となる焼夷兵器その他の特定通常兵器(一)」『関西大学法学論集』28-2、…

特定通常兵器使用禁止制限条約の成立

以下は、櫻川明巧「特定通常兵器の法的規制」『立法と調査』109、1982.4による。 著者は、外務委員会調査室所属。 通常兵器のうち、「過度の傷害」を与え、 「無差別の効果」を有する兵器に対する関心は、1960年代末ごろから高まった。 特に、ベトナム戦争に…

焼夷兵器に関する国連事務総長報告書

■「ナパーム及びその他の焼夷兵器に関する国連事務総長の報告書(一)(二)」『関西大学法学論集』23(2)、(3)、1973年7月、9月 以下は1972年、国連第26回総会における決議2852に基づき、 国連事務総長のもとに専門家グループが作成した報告書(竹本正幸氏が翻訳…

黄燐焼夷弾について

最近、米軍による日本空襲について調べ始めたところだが、 米軍史料解読の参考のために、奥住喜重『B-29 64都市を焼く』(揺籃社、2006)を入手した。 同著によると、米軍が市街地に投下した弾種は、 I.B.類(Incendiary Bomb 焼夷弾) I.C.類(Incendiary C…

公文書管理法案と田母神「論文」

毎日JP 「論壇:この1年 中西寛さん、武田徹さん、加藤陽子さんの3氏が語り合う」 武田 福田氏は最近では珍しく歴史志向が強い首相だった。公文書管理を「将来に向けた公共事業」と述べた発言などがその典型だ。具体的目標を拙速に唱えた安倍政権の轍(て…

日本だけが悪かったわけではないという主張に対して

第一に、善か悪かの単純な二分論で判断していいのかと考える。 第二に、果して日本だけが悪かったという主張がなされているのかどうかを調べる。 あったとして、それを裏返しただけの議論をする必要があるのか考える。 単純な議論の土俵に上がる必要はあるか…

あしたのために

善か悪かの単純な二分論で判断しない 敵か味方かの単純な二分論で読むものを限定しない 真なるものへの簡単なアプローチが存在するとは考えない 「すべて○○だ」や「〜だけだった」という表現に対しては、眉に唾をつける ある一つの機関や団体を批判して、そ…

石原莞爾「満蒙問題私見」1931.5

要 旨 一 満蒙ノ価値 政治的 国防上ノ拠点 朝鮮統治支那指導ノ根拠 経済的 刻下ノ急ヲ救フニ足ル 二 満蒙問題ノ解決 解決ノ唯一方策ハ之ヲ領土トナスニアリ 之カ為ニハ其正義ナルコト及之ヲ実行スルノ力アルヲ条件トス 三 解決ノ時期 国内ノ改造ヲ先トスルヨ…

新聞の検閲

○明42.5.5 法律第41号 新聞紙法 第27条 陸軍大臣、海軍大臣及外務大臣ハ新聞紙ニ対シ命令ヲ以テ軍事若ハ外交ニ関スル事項ノ掲載ヲ禁止シ又ハ制限スルコトヲ得 日中全面戦争が開始されると、同条に基いて、以下が施行された。 ○昭12.7.31 陸軍省令第24号 ○昭1…