日本近現代史と戦争を研究する

歴史学の観点から日本近現代史と戦争について記します。

書庫

「捕虜を殺す兵士・殺さない兵士」

■今野日出晴「捕虜を殺す兵士・殺さない兵士」『歴史地理教育』663、2003.12 兵士になることの意味をどう授業するのか。 当時の兵士の捕虜の認識、「刺突訓練」の状況を確認した後、 次のように進める。 例えば、君たちの指揮官が「捕虜の一人も斬れない」で…

史料講読を通じた日中戦争史学習

■井口和起「史料講読を通じた日中戦争史学習」歴史教育者協議会編『アジア太平洋戦争から何を学ぶか』青木書店、1993 1990・91年度、京都府立大学文学部史学科の「日本史史料講読」の授業。 テキストは、『南京事件・京都師団関係資料集』収録の兵士の日記と…

いまの学生・生徒と歴史教育

歴史教育と歴史研究をつなぐ (岩波ブックレット)作者: 山田朗出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2007/11/06メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 7回この商品を含むブログ (6件) を見る 座談会の内容をまとめたものである。 山田朗氏が司会を務め、ほか六名…

大学歴史教育と研究の社会的意義

■瀧ヶ崎惠一「大学歴史教育論の初歩」『歴史学研究』609、1990.8 大学の授業内容を構成するためには、歴史研究をそのまま用いることも、また高校の授業実践をかりることもできず、歴史研究が社会に貢献する一案として構想することが求められるのである。 (2…

詭弁的相殺法と常識

詭弁論理学 (中公新書 (448))作者: 野崎昭弘出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 1976/01メディア: 新書購入: 30人 クリック: 190回この商品を含むブログ (148件) を見る 「……とも考えられる」とか「……かもしれない」という論法は、詭弁的相殺法になりやす…

屈服による研究と教育の一体化

■田中彰「一般教育における歴史教育の問題」『歴史学研究』370、1971.3 ひとたび歴史研究と歴史教育との分離を認めるや、もはや歴史教育のなかに、天皇制権力=イデオロギーの介入・滲透を防ぐ歯止めはなくなる。他方、そうした天皇制権力=イデオロギーへの…

歴史の現実と主観的願望

■安井俊夫「スパルタクスの反乱をめぐる歴史教育と歴史学(上)」『歴史学研究』564、1987.2 歴史学が歴史の現実から離れた主観的願望を排するのは当然だと思う。が、歴史教育もそれと全く同じでいいのだろうか。授業の中での子どもの発言、あとから書いたもの…

発話者のポジションへの着目

人が歴史とかかわる力―歴史教育を再考する作者: 安達一紀出版社/メーカー: 教育史料出版会発売日: 2000/11メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (1件) を見る 著者は、歴史教育において、生徒が「歴史」の「消費者」であるという視点が重要で…

歴史学と歴史教育は分けられるか

歴史からの反論―教科書批判者たちの正体作者: 尾上進勇,村上雅盈出版社/メーカー: 東京出版発売日: 1997/05メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 6回この商品を含むブログ (1件) を見る 俗っぽい表現が気になるところが多い本だが、 的確な言明も多いと思う…

南京事件犠牲者総数の決定は立証目的ではなかった

笠原十九司『南京事件論争史』74-75頁において、 参考にされているのは、以下の記述である。 ■戸谷由麻「東京裁判における戦争犯罪訴追と判決」笠原十九司・吉田裕編『現代歴史学と南京事件』柏書房、2006 現代歴史学と南京事件作者: 笠原十九司,吉田裕出版…

その時々の南京事件否定説が必要

ふたたび、笠原十九司『南京事件論争史』より。 文部省の歴史教科書検定で南京事件の記述をさせまいとする姿勢は、現在にいたるも一貫しており、そのためには南京事件の事実は定説になっていないことを印象づけるために、その時々に否定説を書いた「歴史書」…

リットン調査団への国民の期待

戦争の日本近現代史 (講談社現代新書)作者: 加藤陽子出版社/メーカー: 講談社発売日: 2002/03/19メディア: 新書購入: 10人 クリック: 65回この商品を含むブログ (50件) を見る 加藤陽子氏は、国際法にのっとり正しく行動してきた者が 不当の扱いを受けたとす…

今日の到達点とディベート授業

■佐貫浩「教育における価値相対主義と『自由主義史観』」松島榮一・城丸章夫『「自由主義史観」の病理』大月書店、1997 「自由主義史観」の病理―続・近現代史の真実は何か作者: 松島栄一,城丸章夫出版社/メーカー: 大月書店発売日: 1997/12メディア: 単行本 …

歴史的責任とポスト・コロニアル

■酒井直樹「日本史と国民責任」酒井直樹編『ナショナル・ヒストリーを学び捨てる』東京大学出版会、2006 ナショナル・ヒストリーを学び捨てる (歴史の描き方)作者: ひろたまさき,キャロルグラック,酒井直樹,Carol Gluck出版社/メーカー: 東京大学出版会発売…

歴史学批判

ひろたまさき「パンドラの箱―民衆思想史研究の課題」酒井直樹編『ナショナル・ヒストリーを学び捨てる』東京大学出版会、2006年より。 問題は、認識論的な不可知論をもって歴史学の存在を否定する傾向や、歴史修正主義に顕著な主観主義の傾向であり、もっと…

生徒が社会科で出会う「問題」の三層構造

村井淳志『歴史認識と授業改革』教育史料出版会、1997年、130-132頁より。 歴史認識と授業改革作者: 村井淳志出版社/メーカー: 教育史料出版会発売日: 1997/12メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (1件) を見る 第一の層に属する問題は、学…

陸軍防衛召集手続経過一覧

陸軍省兵備課「陸軍防衛召集規則の要綱」『偕行社記事』819、1942.12より。 1.防衛召集取扱者 → 在郷軍人又は国民兵 (調査) 2.防衛召集担任官 → 防衛召集取扱者 (人員内達) 3.軍司令官(又は師団長) → 防衛召集担任官 (人名報告) 4.軍司令官(又は師…

争点のカスケード

ふたたび、荻上チキ『ウェブ炎上』より。 サイバーカスケードといえば、例えばA対Bという意見の対立があったとして、Aの方向に意見が極端に傾いてしまうこと、あるいはAとBの根深い対立が築かれてしまうことが問題とされます。しかしここで重要なのは、…

侵略戦争の弁証法

先に、満州事変以後の流れがほぼ予測されていたことを紹介しましたが、 油井大三郎氏は、その流れを「侵略戦争の弁証法」と表現しています。 ■油井大三郎「世界史のなかの戦争と平和」『岩波講座世界歴史25』1997 ナチス・ドイツの場合には、目的に大義のな…

盲目の愛国心

■竹越與三郎『人民読本』1913、34-38頁 愛国にせよ、忠義にせよ、余は其の盲目なるざらんことを希ふ。盲目の愛国心は、却つて国家の目的を過つを免れず。 然るに世には国家の事といへば、之を非難せざることを以て、愛国心とするものあり。奸雄また之に乗じ…

第二次世界大戦の性格

■木畑洋一「第二次世界大戦の構造と性格」歴史学研究会編『講座世界史8 戦争と民衆』東京大学出版会、1996 帝国主義国間の帝国主義戦争として性格を概括しうる第一次大戦に比べて、第二次世界大戦の性格は複合的であった。その複合性はしばしば次の三つの基…

予測どおりの日本のアジア政策の破綻

帝国在郷軍人会札幌支部『良民』208(1934.1)に、 「紐育の『フオーリン・アツフエヤズ』誌十月号に、コロンビヤ大学教授ジヨン・イー・オーチヤードの寄稿した『日本のアジア政策は経済的に何を齎したか』と題する論文」が要約して紹介されています(9−10…

エコチェンバーとは

以前のエントリでみたように、 内田樹氏は、インターネットでの情報収集の問題点が「選択の反復」によって、 「臆断」を強化していくことにあることを指摘していました。 荻上チキ氏も、『ウェブ炎上』において次のようにより詳細に述べています。 ウェブ炎…

防衛召集問答 陸軍防衛召集規則の解説

『週報』314号、1942.10.14に、 陸軍省報道部「防衛召集問答 陸軍防衛召集規則の解説」が掲載されています。 (アジア歴史資料センター ref:A06031047600) このように『週報』には、法令の解説が掲載されることがあり、 法の意図や運用を分析するに当たって…

なぜ師匠はすぐに技を教えないのか

NHK朝の連続小説『ちりとてちん』において、 主人公はようやく弟子入りが認められ、内弟子生活がスタートしましたが、 掃除洗濯だけの日々に不満をこぼしています。 なぜ師匠はすぐに技を教えてくれないのでしょうか。 この点に関して、 外山滋比古氏は、…

「シーケンシャル・アクセス」と「ランダム・アクセス」

再び、内田樹・鈴木晶『大人は愉しい』より。 内田氏は、書物とインターネットの違いを次のように述べています。 書籍とインターネットは、知への接近の仕方がまったく違っています。これを「情報のソース」としてひとくくりに扱うことから、いろいろな誤解…

ラカンと陰謀史観

ネットでは、その場しのぎのおよそ生産的でない議論が溢れていますが、 相手の議論に刺激されて論点が深まっていく議論をみると、心が弾みますね。 内田樹・鈴木晶『大人は愉しい』は、ふたりの「メル友交換日記」を活字にしたものです。 大人は愉しい (ちく…

早川和男『権力に迎合する学者たち』三五館 2007

著者は、神戸大学名誉教授。建築学者。「すまい学」の第一人者。本書の目次は、つぎのとおり。 はじめに 序章 格差社会論・護憲平和論の盲点 第1章 権力に迎合する学者たち 第2章 知識人の震災責任を問う 第3章 学問が「カネ」に支配される時 第4章 なぜ学者…

日中戦争の日記一覧

(藤井忠俊『兵たちの戦争 手記・日記・体験記を読み解く』朝日選書665、2000、序〜二章より登場順) 梅田房雄『北支転戦記・梅田房雄従軍日記』 上原要三郎『輜重兵秘日記』 朝香進一『初年兵日記』鵬和出版 1982 田島正雄『孫たちへのメッセージ・日支事変…

陣中日誌記載要領

「中隊附属必携」士官候補生・掘貞雄 昭14.9 アジア歴史資料センター ref:A3032045000 第8画像 陣中日誌 甲-----戦史ノ資料ト為ス 乙-----将来兵器弾薬器具材料燃料被服装具等ニ関シ改良資料ト為ス記載事項 (甲)一 毎日ノ位置(毎日具体的ニ詳記) ニ 作為…