日本近現代史と戦争を研究する

歴史学の観点から日本近現代史と戦争について記します。

2008-01-01から1年間の記事一覧

「責任」概念にともなう「本質的な理不尽さ」

■小浜逸郎「『天皇の戦争責任』議論を始末しよう」『天皇の戦争責任・再考』新書y090、2003 天皇の戦争責任・再考 (新書y)作者: 池田清彦,小浜逸郎,橋爪大三郎,吉田司,井崎正敏,小谷野敦,八木秀次出版社/メーカー: 洋泉社発売日: 2003/07メディア: 新書 ク…

戦犯・靖国参拝に関する質問書と政府答弁書 平17.10

質問: 質問第21号「『戦犯』に対する認識と内閣総理大臣の靖国神社参拝に関する質問主意書」平17.10.17 野田佳彦提出 答弁: 答弁第21号「衆議院議員野田佳彦君提出『戦犯』に対する認識と内閣総理大臣の靖国神社参拝に関する質問に対する答弁書」平17.10.2…

恩給と戦犯

昭和21年1月、政府はGHQの指示を受けて、恩給の給与を停止する。 昭20.11.24 SCAPIN 338 “Pensions and Benefits” 1. The Imperial Japanese Government is directed to take the necessary steps as rapidly as practicable and in no event latar than …

真の決戦場は国民の胸底三寸にあり

■大本営陸軍報道部「粛として顧る」『週報』424・5合併号、昭19.12.8、10頁 嘗てラバウルの戦ひ酣なりしとき、一部の論者は「ラバウルこそ日米の決戦場」であるとなし、仮りにラバウルを失ふが如きことあらんか、忽ち日本は敗北に陥るかの如き極論をあげつら…

衆院委員会(46.7.9)における芦田均の第9条に関する発言

1946年7月9日、衆議院委員会において、 芦田均(日本自由党)は第9条に関して、次のように発言している。 私は次の如き結論が正しいのではないかと思います。不幸にして自衛権の問題に付ての政府の答弁は、稍々明瞭を欠いて居ります。自衛権は国際連合憲章に…

陸軍省新聞班「米国国務長官ノ演説及反響」昭7.9.6

8月8日、ニューヨークにおける演説。 ニ.不戦条約ハ其成立ト共ニ人類思想ニ一大革命ヲ起サシメ戦争ヲ以テ不法ナリトナスニ至ラシメタリ而モ其根底ハ戦争防止ノ為ニ何等力ノ手段ヲ執ルニ非サレハ文明ノ前途危シトノ動機ヨリ来レルモノナリ 三.不戦条約ニ対…

海軍中将・中野直枝「重大なる時局と国民の覚悟」昭6末?

■海軍中将・中野直枝「重大なる時局と国民の覚悟」神奈川区青年団連盟編『剛健』第2号、昭6末?帝国在郷軍人会副長である海軍中将・中野直枝は、 昭和6年11月7日、神奈川区青年団連盟後援の時局講演会において、次のように述べている。 今度理事会の鼻息が如…

昭12.9.28 社説「連盟に誨ゆ」

■社説「連盟に誨ゆ」『北海タイムス』昭12.9.28 連盟乃至列国の向背如何にかゝはらず、わが既定方針は枉げ得ざること勿論であつて、日支両国の協調による東亜の平和確立といふわが根本国是即ち是れである。しかも、わが国はこれを不変の方針として、凡ゆる努…

昭12.6.26 コラム欄「閑是非」

■コラム欄「閑是非」『北海タイムス』昭12.6.26 上半期の貿易入超尻六億突破の形成に、政府もいよ\/本腰で対策考究の必要に迫られている 満洲国成立当時、あれ程囃された農産資源や、重工業資源が事実満洲国に存在するとするなれば、この際ドシ\/これを…

昭11.11.27 社説「日独協定成立」

■社説「日独協定成立」『北海タイムス』昭11.11.27 日独防共協定は、こゝに成立した。ソ連の飽なき世界赤化の脅威を受くること最も甚だしき日本とドイツとが、相協力して赤化防止の手段に出るは、極めて自然の成行である。 ヨーロツパにあつては、フランスを…

「次に来るべきもの」昭12.10

■巻頭言「次に来るべきもの」『北海道統計』54、昭12.10 日支事変は、世界戦史に未だ嘗て見ざる勇猛果敢神速なる皇軍の活躍によつて間もなく我国の圧倒的勝利に結末を見ることは疑の余地もないことであるが、さてその次に来るべきものは何であらう。 現下の…

「総ては戦争挑発者ルーズヴエルトの責任」

■「編輯余禄」『北海道統計』101、昭16.12 昭和十六年十二月八日こそ銘記せらるべきである。隠忍久しきに及んだ皇軍も、遂に、新しき世界秩序建設の為めに、勇躍干戈を採つて起つた。 緒戦、瞬時にして米英太平洋艦隊を覆滅し布哇に、馬来に不滅の戦果を収む…

昭11.9.23 社説「排日抗日の絶滅が肝要」

■社説「排日抗日の絶滅が肝要」『北海タイムス』昭11.9.23 海軍省では、対支問題の重要性に鑑み、省部連合協議を行つた結果、支那に誠意の認むべきものなく、排日抗日絶滅に関するわが要求を全面的に容認せざる以上、在支権益擁護と居留民の生命財産の保護の…

陸軍特別大演習沿革

明治15年3月20日 「野外演習軌典」 明治22年陸達第19号「陸軍軍隊機動演習条例」(明22.2.15) 同年同第142号「野外要務令草案」(明22.9.30) 同年8月 野外要務令改正 大正4年軍令第11号「秋季演習令」 同13年同第2号「陸軍演習令」 (以下、『北海道統計』第41…

昭11.9.18 社説「満洲事変満五周年」

■社説「満洲事変満五周年」『北海タイムス』昭11.9.18 顧みれば昭和六年九月十八日夜、奉天郊外柳条溝の満鉄線路が旧軍閥支那兵のため破壊され、それを導火線として爆発した事変が全満洲を混乱裡に捲き込んでから、今年で丁度満五年になる。 満洲国の進歩発…

昭11.9.11 社説「又復邦人虐殺事件の発生」

■社説「又復邦人虐殺事件の発生」『北海タイムス』昭11.9.11 我等日本国民を極度に憤激させた成都事件からまだ幾何も経過して居ない今日、又また広東省北海において、在留邦人が排日暴徒の手に虐殺された事件を出すに至つたのは、慮外千万といはなければなら…

「陸戦条規中兵卒ノ記憶スベキ事項」

■軍需商会編纂部『軍隊精神教育口授資料』1911年 「緒言」には次のようにある。 本書ハ著者カ多年隊附間ニ於テ精神教育ノ為メ下士卒ニ口授セシ事項ヲ網羅シテ一問題毎ニ談話的ニ説述シタルモノトス 捕虜の扱いについては、 第二百七十一問題 陸戦条規中兵卒…

後藤丙午「大東亜共栄圏の経済について」昭17.8

■後藤丙午「大東亜共栄圏の経済について」『傷痍軍人読本』第26輯、昭17.8 著者は同盟通信社員で、新潟県村上町で開催された 軍人援護教育担当教職員地方別講習会における講演をおこしたもの。 日本と各占領地域の間乃至は占領地域相互間の送金は認められて…

靖国参拝遺児たちの作文

銃後の社会史―戦死者と遺族 (歴史文化ライブラリー)作者: 一ノ瀬俊也出版社/メーカー: 吉川弘文館発売日: 2005/11メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 12回この商品を含むブログ (7件) を見る 一ノ瀬俊也『銃後の社会史』(歴史文化ライブラリー203、2005)…

神崎清「北支の密輸地帯を往く」昭11.9

【三】(『北海タイムス』昭11.9.9) 満洲建国後、勢ひに乗じて北支に進出した日本人の誤れる優越感情の自由なる表現は、同じく日章旗の下に保護された朝鮮人の好ましからぬ商業活動と相俟つて、一時は恐日時代を現出したが、今やその機運が深刻な抗日運動に…

G・シユタイン「円と剣」1938.12

■G・シユタイン「円と剣」1938.12(東亜研究所による翻訳印刷) 日本本国、その植民地たる朝鮮と台湾、関東州を含む日本の従属国満洲によつて構成されてゐる円ブロツクは、はつきりしない仕方で北支へ、更に一層はつきりしない仕方で中支占拠地域へ、更に極…

衆議院議員選挙諸資料(1936)

■「衆議院議員選挙諸資料」『北海道統計』33、1936.1 (明らかな誤りは訂正した) □総選挙 - 年月日 議員定数 1 1890.7.1 300 2 1892.2.15 〃 3 1894.3.1 〃 4 1894.9.1 〃 5 1898.3.15 〃 6 1898.8.10 〃 7 1902.8.10 376 8 1903.3.1 〃 9 1907.3.1 379 10 …

「支那軍隊」の変化

■雨宮巽「新支那の実相に就いて」(『支那』昭12.5抜刷)著者は、「前南京駐在武官陸軍省新聞班」の歩兵中佐で、 昭和7年に南京に赴任し、2年余勤務した。 昭和2〜5年には、「揚子江筋」に赴任。 当時(引用者注―満州事変前)の情況に付て一言御参考に申しま…

朝鮮総督府『我国は朝鮮で何を為したか』昭7

明治四十三年日韓併合行はれ、我国が朝鮮統治の局に当つてから、星霜茲に二十余年、此の間我国は朝鮮に於いて何を為したか。即ち我国は、朝鮮統治上如何なる施設計画を遂行し、半島の産業文化を如何に発展向上せしめ得たか。又朝鮮の民衆をして如何なる恵沢…

「表象」と「歴史学的な知」

■安丸良夫「総論 表象の意味するもの」歴史学研究会編『歴史学における方法的転回』青木書店、2002 たしかに「史料」はなんらかの「表象」であり、私たちはこの「表象」の意味作用を通じてしか「事実」に迫ることができない。さらに私たちは、こうした「表象…

軍票の栞

■支那派遣軍経理部『軍票の栞』昭15.2.11 聞き手と受け手の対話形式をとり、平易な文章で「宣伝」されている。 「法幣はよく敵性通貨だと言はれるがどう言ふ意味か?」 法幣の発行及統制は敵方たる蒋政権に掌握されて居つて蒋政権の抗戦力は総て法幣によつて…

民主化と知る権利

■北海道弘報課『道政だより』第42号、1951.9.20 道庁の仕事は、直接間接に皆さんが非常に苦心して納められている税金によつて、まかなわれているのです。皆さんの税金がどのように使われているか?皆さんの税金を使つて、どのように仕事が進められているか?…

軍票史研究の課題(1987年)

■小林英夫「軍票史研究の現状と課題」『駒沢大学経済学論集』19-1・2、1987.10 1987年時点で、小林英夫氏は軍票史研究の進むべき方向性について、次のように述べた。 われわれがめざす基本的研究方向は、桑野仁に始まり原朗、小林英夫、柴田善雅らが深めた内…

戦争学習と叙述と実践

戦争非体験第三世代にどう教えるか。 教師の言葉がどう伝わるかについて自覚的でなければならない。 ■今野日出晴「歴史教育の語られ方」『歴史評論』646、2004.2 私自身の小さな経験でいうなら、戦争学習において、生徒や学生たちは、戦死者や被爆者の数が実…

紙面に掲載される捕虜殺害

『静岡新報』1932年5月1日付には、戦争熱が高揚するなか、 満洲独立守備隊第六大隊第四中隊兵士の次のような知人宛ての便りが紹介されている。 (荒川章二『軍隊と地域』青木書店、2001年) この戦闘で支那兵を五十名ばかり捕虜とし武装解除して全部縛り上げ…